今回はツグミさんです。
前回のアトリさんに続いて、可愛らしい名前の鳥ですが、悲しい悲しい鳥だったりします。
そして、気弱な性格。
そんな「ツグミ」の名前の由来についても考察していきます。
良かったら読んでみて下さい。
ツグミについて
ツグミ(ヒタキ科)Turdus naumanniは全長24cmで、ヒヨドリより一回り小さな鳥です。
冬鳥として、秋にシベリアから渡ってきて、春まで全国の平地から山地まで、草地、農耕地、林などに棲みます。
ツグミの悲しい過去
かつて、ツグミとその仲間は、大量に 霞網 で捕獲され、焼き鳥として食用に売られていました。
江戸時代から始まったといわれるツグミの 霞網猟 ですが、1935年までは、毎年400万羽も捕獲されていたといわれます。
霞網にかかったイカル
霞網猟 は、比較的簡単に大量の渡り鳥などを捕獲することができ、種の存続を脅かします。
第二次世界大戦後、アメリカのGHQ(天然資源局野生生物担当官)で、日本に赴任したオースティン博士の勧告により、1947年には 霞網猟 が禁止されました。
しかし、それでも密漁は絶えませんでした。
その結果、1991年の「鳥獣の保護及び狩猟に関する法律」が改正され、 霞網 の所持、販売、頒布が全面的に禁止されたのでした(特別な許可があれば可能)。
ツグミの名前の由来
「つぐみ」の名前は奈良時代から知られていました。
しかし、その語源については、定説がありません。
幾つかある俗説のうち最もよく知られているのが「口をつぐむ」が語源であると云う説です。
『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(注1)には「口を噤(つぐ)むからツグミ。ツグミは冬鳥。冬はよく聞こえた鳴き声も、夏になると全く聞こえなくなるから」とあります。
この説は『新編大言海』(注2)の「噤(ツグ)みノ義、夏至ノ後、聲無ケレバ云フ」に準拠したようです。
なぜなら、他の多くの冬鳥たちも夏になれば北へ渡り去り、当然声も聞けなくなります。
これはツグミに限った事ではないからです。
(注1)安部直哉・叶内拓哉(2008)『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(山と渓谷社)
(注2) 大槻文彦(1982)『新編大言海』(冨山房)
チチクラゲの新説!ツグミの名前の由来
ここで述べる竦みとは「硬直して動かなくなる」という意味です(注3)。
ツグミは人や外敵の気配を感じると、突然動きを止めて竦むことがよくあります。身を守るための一種の擬態であろうと思います。他の鳥たちの場合は、羽ばたいて逃げることが多いです。
この習性から、初めは「すくみ鳥」と呼ばれていたものが「すくみ」となり、これが「つぐみ」へと転訛したと考えられます。
(注3)大野晋、佐竹昭広、前田金五郎 (1990) 『岩波古語辞典補訂版』 (岩波書店)
まとめ
ツグミについてのまとめです。
- けっこう焼き鳥にされていた。
- ツグミの名前の由来の定説は、「口をつぐむ」から来ている。
- チチクラゲが唱える新説は、「身を竦める」から来ている。
次回は、カワセミです。