アトリ。まるで無限増殖バグ?超巨大な群れと、名前の由来の秘密を暴露

チチクラゲ
ボンジュール。日本野鳥の会で徳島県支部長を務めていた、チチクラゲと申します。

今回はアトリさんです。

かわいらしい名前ですが、ときに冷たく、ときに寂しく、ときに白く、ときに黒く、場面場面で行動や容貌が変わる不思議な鳥です。

アトリの名前の由来についても考察していますので、良かったら読んでみて下さい。

 

アトリについて

アトリ。徳島県小松島市。
アトリ(冬羽)。2012年12月20日。小松島市田野町赤石。撮影チチクラゲ。

 

アトリ(アトリ科)Fringilla montifringillaは、全長約16cmでスズメ大の小鳥です。

冬鳥として全国の平地から山地に群れで渡来し、林や農耕地に棲みます。

 

アトリの群れ

アトリの群れ。徳島県。
アトリの群れ。撮影チチクラゲ。

 

アトリは日本に冬鳥として渡来します。

この鳥の特徴は、冬季に大群になることです。他にも冬季に大きな群れを作る鳥はありますが、その中でもアトリがダントツです。

アトリの群れ。小松島小芝生町。
アトリの群れ。小松島市芝生町。撮影チチクラゲ。
アトリの群れ。小松島小芝生町。
アトリの群れ。小松島市芝生町。撮影チチクラゲ。

 

アトリは夏季にシベリアなどユーラシア大陸北部で繁殖します。

そこではおすさえず って広いテリトリー(縄張り)をつくり,他のアトリを排除します。

 

ところがそんな排他的はいたてきなアトリですが、越冬地では秋から春の間、大勢が寄り集まって大群を作ります。

その数は数百羽から数千羽になります。時には数十万羽にも達します。

アトリの群れ。徳島県小松島市。
アトリの群れ。徳島県小松島市芝生町。撮影チチクラゲ。

 

アトリの名前の由来

アトリの正面から撮影。徳島県小松島市。
アトリの飛翔正面。徳島県小松島市芝生町。撮影チチクラゲ。

 

チチクラゲ
アトリの名前の由来について考察します。

あとり」の名前は奈良時代から知られていました(注1)。その語源には諸説があります。

『名前といわれ日本の野鳥図鑑』(注2)によると、「秋に渡来する鳥なのでアキトリと呼び、それが略された」としています。

 

(注1) 菅原 浩・柿澤亮三 (1993) 『図説日本鳥名由来辞典』(柏書房)

(注2)国松俊英 (1995)『名前といわれ・日本の野鳥図鑑 ①野山の鳥』(偕成社)

 

チチクラゲの新説!アトリの名前の由来

アトリの群れ。徳島県小松島市。
アトリ。穀物に群がる。徳島県小松島市芝生町。撮影チチクラゲ。

 

チチクラゲ
しかし、私はこの説に賛同できかねます。

なぜなら秋に日本に渡来する小鳥の種類は数多くあり、アトリだけを「秋鳥」と呼ぶには無理があると思うからです

 

鳥の名前は、他の類似種と区別するために、その種特有の色、形、声、習性などに因んで付けるのが普通です。鳥の名前に「秋鳥」「春鳥」などと季節の名前を付けるのは不自然であるように思えます。

 

また、『新編大言海』(注3)はアトリの群れる習性から「集(アツ)鳥(トリ)ノ略ナルベシ」としています。

しかし、群をつくる鳥はアトリ以外にもマヒワやカワラヒワ、スズメ、レンジャク類、ヒヨドリ、ムクドリなど数多くあり、とりわけアトリという名前の語源になるほど特徴的な習性ではないように思います。

 

チチクラゲ
私はアトリの語源が「粟鳥=あわとり」ではないかと考えています。

 

アトリはアワやヒエ等の種子を好んで食べます

アワはイネほど水(灌漑)を必要としないため、水の乏しい丘陵地の畑地作物として古代の日本では各地で広く栽培されていました。

秋になると群れで渡来したアトリが、こぼれ落ちたアワの実を拾う光景が各地で印象深く観られたに違いありません。

このことから「粟鳥あわとり」と呼ばれるようになり、後に「アトリ」と変化したものと考えられます。

秋田県、岩手県、岡山県などの方言でアトリを「アワトリ」と呼ぶのは、その名残のように思われます。

 

(注3) 大槻文彦(1982)『新編大言海』(冨山房)

 

アトリの夏服と冬服

アトリのおすは、夏羽なつばね と 冬羽ふゆばね で 羽色うしょく が大きく変化します

アトリの冬羽と夏羽の比較画像。
左はアトリ(雄)の夏羽。右はアトリ(雄)の冬羽。夏羽は頭部が真っ黒で、冬羽は頭部が灰色っぽい。撮影チチクラゲ。

春になると、頭部の羽衣ういが真っ黒になり、冬のアトリとは別種のように見えます。

 

まとめ

アトリ(雄)の夏羽
アトリ(雄)の夏羽。撮影チチクラゲ。

 

アトリについてのまとめです。

  1. 夏季の雄は排他的。越冬地では一転して、巨大な群れをつくる。
  2. 名前の由来の定説:「秋鳥あきとり」「集鳥あつとり」から来ている。
  3. チチクラゲの新説:あわをよく食べるので、「粟鳥あわとり」から来ている。
  4. 雄は夏羽と冬羽で大きく色が変化する。

 

次回はツグミさんです。

チチクラゲ
お楽しみに!ジョゼフィーヌ。
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