今回は、みんな大好き「カワセミ」についてです。
カワセミの美しさや、様々な功績について語っていきます。恒例の名前の由来についても考察していきますので、良かったら読んでみて下さい。
カワセミについて
カワセミ(カワセミ科)Alcedo atthisは、全長17cmでスズメより二回りほど大きい鳥です。
全国の池や川でほぼ周年見られます。北海道では夏鳥です。
青い宝石
カワセミを表す漢字名のひとつに「翡翠」があります。
「翡」と「翠」それぞれ一語だけでもカワセミと読むことが出来ます。その場合は「翡」が雄で、「翠」が雌を指します。
また、ヒスイという深緑の半透明な宝石があり、その漢字「翡翠」はカワセミ(翡翠)と同じ文字です。
宝石のヒスイは、元々は他の宝石と同じく、「玉」もしくは「玉」と呼ばれていました。
しかし、その宝石の緑の美しい色が、カワセミの上面の美しい青緑色に似ていました。
そのため、「翡翠」の字が当てられることになり、その宝石は「翡翠」と命名されました。
つまり、カワセミが、ヒスイの漢字と読みの元となったのです。
ちなみに、日本の翡翠産地は新潟県糸魚川市が有名です。
漁師の王様
カワセミは、魚を捕るときは、水辺の杭や木の枝、岩の上などから、魚を目掛けてダイビングしますが、止まり場所がない所では、ヘリコプターのように空中でホバリングして眼下の魚を狙います。
魚を捕るのが上手なので、英語ではKingfisher(漁師の王様)と呼ばれています。
新幹線の開発に寄与
カワセミのくちばしは、水中にダイビングしても、水しぶきが上がりにくい形状になっています。
そこで、新幹線500系の開発には、空気の圧縮波を押さえるために、カワセミのクチバシの形状を参考にしたそうです(開発者は日本野鳥の会の会員でした)。
カワセミの雄と雌と巣作りと
カワセミの雄、雌の見分け方にはコツがあります。
カワセミの雄は上下のくちばしが黒いのですが、雌は口紅を塗っているように、下くちばしだけが赤いのです。
巣は土手や崖に自分で穴を穿ってその中でヒナを育てます。穴は横に60~80センチが普通ですが、1メートルくらい奥まで掘ることがあります。
カワセミの名前の由来
カワセミは「翡翠」または「川蝉」と書きます。
この名前の由来について、『図説日本鳥名由来辞典』(注1)によると、奈良時代には「そにとり」とか「曾比=そび」と呼ばれていました。
その後、時代を経て「そび」が「せび」、「せみ」と変わり、江戸時代になると「しょうびん」や「かわせみ」が一般に用いられたと有ります。
「そび、せび」」の由来について、『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(注2)では「曾比の語源はこの鳥がよく発しているチッ、ツーの擬声語か」としています。
そして「鳴き声『そび』『せび』から『セミ』になり、川などの水辺にいるのでカワセミという名前になった。」とあります。
チチクラゲの新説!カワセミの名前の由来
カワセミが「蝉=セミ」と呼ばれるのは、この鳥のヒナの鳴き声が大いに関係しているのではないかと考えています。
ただ、一般にヒナの鳴き声はそれほど印象的ではないし、聞ける期間も機会も多くありません。
そのためか鳥の名前がヒナの鳴き声に由来することはあまりないようです。
しかしカワセミは人目につく崖土に巣穴を掘るため、比較的身近な野鳥として古人がヒナの声を耳にする機会はよくあったと考えられます。
カワセミのヒナの声は「ジョービン、ジョービン、ジョービン」または、「ジュビ、ジュビ、ジュビ」とセミの鳴き声に極めてよく似ています。
このヒナの声から古人は「セミ」を連想し、「そび」が「せみ」へと導かれ、後に「川の蝉=かわせみ」と呼ばれるようになったのではないかと私は考えています。
(注1) 菅原 浩・柿澤亮三 (1993) 『図説日本鳥名由来辞典』(柏書房)
(注2)安部直哉・叶内拓哉(2008)『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(山と渓谷社)
まとめ
カワセミについてのまとめです。
- 宝石に、カワセミの名前が付けられるほどの美しい鳥。
- ホバリングが可能で、漁も得意。クチバシは新幹線500系のモデルになるほど合理的。漁師の王様の二つ名がある。
- オスのクチバシは黒く、メスのクチバシは下側だけ赤い。
- 名前の由来の定説:鳴き声「そび」「せび」が、「セミ」となり、川などの水辺にいるのでカワセミとなった。
- チチクラゲが唱える名前の新説:ヒナの声が、蝉の鳴き声に似ていたため、後に「川の蝉=かわせみ」となった。
次回はミサゴです。