今回はニュウナイスズメです。
可愛らしい小鳥ですが、害鳥扱いされる悲しい鳥です。
そんなニュウナイスズメの名前の由来等について解説しましたので、良かったら読んでみて下さい!
ニュウナイスズメについて
ニュウナイスズメ(スズメ科)Passer rutilans は、全長は14cmでスズメとほぼ同大の小鳥です。
本州中部以北の林で繁殖し、それ以南では旅鳥または冬鳥として局地的に林や農耕地などに渡来します。
漢字名は「入内雀」です。
スズメがアジアからヨーロッパまで広い範囲に棲んでいるのに対し、ニュウナイスズメは主に中国、朝鮮半島、日本など東アジアの一部にしか棲んでいません。
したがって、欧米のバードウォッチャーからは珍しがられる存在です。
害鳥扱いされやすい
春から夏の間は本州中部以北の山林にすみ、樹木の洞で繁殖します。
巣はキツツキがうがった穴を利用することがよくあります。
秋になると本州中部以南の暖地に移動しますが、このころは、ちょうど稲が実る頃です。
ニュウナイスズメは群れで稲田にやってきて、稲の穂に止まり乳熟期のモミをついばみその汁を吸います。するとコメは実らず農業に被害を及ぼします。
このように穀物を食べて農業に被害を与えるのは、ニュウナイスズメだけではなくスズメも同様です。そのため「害鳥」とされてきました。
しかし、スズメの場合は周年ほぼ同じ地域に留まり、特に繁殖期(春から夏)には農耕地に棲む昆虫(害虫)等を食べるため「益鳥」と成り代わります。スズメは「期間限定で益鳥と害鳥」を繰り返しているのです。
一方で、ニュウナイスズメの場合は、繁殖期(春から夏)には本州中部以北へ渡去し、田畑から離れた山林に移動して、そこで昆虫等を食べます。
このため「益鳥」となる期間が短く、農耕地に与える恩恵が少なく、ニュウナイスズメは農家からは大変嫌われています。
ニュウナイスズメの名前の由来
ニュウナイスズメは江戸時代になって“にうないすずめ”と呼ばれるようになりました(注1)。
名前の由来には、顔の黒子説や、「入内」という地名説、それに歌人藤原実方の魂にまつわる説などがあります。
中でもよく知られているのは、新嘗雀がなまって「にゅうないすずめ」になった、という説です。
新嘗とは「秋に、その年に新しく取れた穀物を神に供えて神をまつり、天皇みずからも新穀を食すること」です(注2)。
(注1)菅原 浩・柿澤亮三(1993)『図説日本鳥名由来図鑑』(柏書房)
(注2)編集 松村 明(2006)『スーパー大辞林』(三省堂)
チチクラゲの新説!ニュウナイスズメの名前の由来
上述したように、秋に渡来し、大群でイネを食害し、去っていくため害鳥とされてきました。
ニュウナイスズメは農民が精根込めて育てたイネを食害するため、農民にとっては邪悪な存在です。
この面憎い鳥に対し、このような尊い、しかも感謝を込めた名前を古人が与えたとは考えにくいからです。
私は、この鳥が秋に渡来し、実ったばかりの新米(ニイヨネ)(注3)を食べることから、「新米雀=ニイヨネスズメ」と呼ばれていたものが「ニヨネースズメ」となまり、後に「ニュウナイスズメ」になったのであろうと考えています。
(注3)編者 新村 出(1998)『広辞苑第五版』(岩波書店)
まとめ
ニュウナイスズメについてのまとめです。
- 全長は14cmでスズメとほぼ同大の小鳥で、東アジアの一部にしか棲んでいない。
- 乳熟期のモミをついばみ農業に被害を及ぼし、去っていくため「害鳥」扱いされやすい。
- 名前の由来:諸説あり。顔の黒子説や、「入内」という地名説、新嘗雀がなまって「にゅうないすずめ」になった、という説等。
- チチクラゲが唱える名前の由来の新説:秋に渡来し、実ったばかりの新米を食べることから、「新米雀=ニイヨネスズメ」と呼ばれていたものが、後に「ニュウナイスズメ」に転訛した。
次回はキツツキです。