今回はセグロカモメです。
セグロカモメのクチバシには謎の赤斑があります。
その赤斑が原因で、ティンバーゲンという学者によって、色々な実験をさせられた鳥でもあります。
その謎について色々と考察したり、名前の由来についても考えがありますので、よかったら読んで下さい。
セグロカモメとは
セグロカモメ(カモメ科)Larus argentatus は、全長61cmでトビより一回り小さい水鳥です。
冬鳥として全国の海や大きな川に渡来します。
大型のカモメ類では、最も数が多いので、前回のカモメやユリカモメなどと比べて、大きなカモメを見かけたら、それはセグロカモメの可能性が高いでしょう。
ティンバーゲンの実験
セグロカモメなど、大型カモメの成鳥の下くちばしには赤斑があります。
この赤斑はアクセサリーの様でかわいいです。
しかし、これは単なる飾りではありません。
実は、ヒナが親鳥からエサをもらうときに、無くてはならない赤斑なのです。
すると親鳥は、半消化されたエサを吐き戻します。
ヒナはこれを食べて育ちます。
実験によると、親鳥のくちばしにこの赤斑がない場合、ヒナは親鳥のくちばしを、積極的につつこうとしません。そのため、親鳥も、積極的にヒナに餌を与えることが出来なくなり、ヒナは飢えてしまいます。
赤斑 は 給餌 するための引き金となっているのです。
このことは、ティンバーゲン(オランダの動物学者・ノーベル医学生理学賞受賞者)が実験を重ねた結果、証明されました。
ということです。
生物のこういった反射や信号刺激には、環境に適応するための「意味」があるのが一般的です。
なのに、ネットを調べても見つけられず、私の持っているティンバーゲンの本を引っ張り出してきても、肝心の「意味」が書かれていないのです。単に、そういった実験結果があった、というようなことしか書かれていませんでした。
ひとつ思ったのは、「托卵」対策です。
カッコウやホトトギス等は、卵の世話や子育てを他の種類の鳥に任せます。一種の寄生行為です。
~考察~
昔々、セグロカモメの祖先は、ヒナを育てる際に、他の種類の鳥のヒナまで頑張って育てていたのではないでしょうか?そう、托卵されていたのです。
その寄生行為により、セグロカモメの祖先たちは力尽きていきました。しかし、セグロカモメの祖先たちの中に、ある日突然、変異種が生まれます。
それが今のセグロカモメです。そのヒナは赤いモノを見ると突く習性を持っていました。さらに成長するとクチバシの下に赤斑が現れ、それを突かれると餌を与えるような習性も持っていました。
本来なら、むしろ子育ての邪魔になるような習性ですが、托卵対策には機能しました。
托卵から生まれたヒナは赤斑を突かないため、赤斑を突く習性を受け継いだセグロカモメの子どもたちだけが、餌を与えられることになりました。
こうして、セグロカモメは托卵する鳥に負けずに、現在まで生き残ってきたのだと、私は考えたのでした。
しかし、問題があります。
カッコウやホトトギスなどの托卵する鳥のほとんどは、セグロカモメのような海鳥ではありません。森の中で棲息しており、住処が全く違うのです。お互いが交わることが無いはずです。
大昔には、托卵をする鳥が多数、海鳥として存在していたのか、それとも他の説が正しいのか、私には分かりません。
ニシセグロカモメ
セグロカモメの足は、通常、ピンク色です。
ところが、中には黄色の足を持つものがあります。
これは、ニシセグロカモメか、またはセグロカモメとニシセグロカモメの交雑種であるといわれています。
ニシセグロカモメは西日本に多く渡来し、東日本では少ないといわれます。
セグロカモメの名前について
セグロカモメは漢字名で「背黒鴎」と表記します。
名前からは背の色が黒いカモメを想像します。
ところがこの鳥の背の色はウミネコより明るい灰色であり、黒味は全くありません。
学名でも本種の種小名はargentatus 即ち「銀色の」の意味です(注)。
日本産鳥類の和名は明治・大正時代に、また昭和時代になっても適宜整理修正を重ねてきましたが、なぜセグロカモメの名前については議論されなかったのか、議論されたとすればなぜ不適切な名前を標準和名として残してきたのか、不可思議です。
(注)内田清一郎・島崎三郎(1987)『鳥類学名辞典』 (東京大学出版会)
まとめ
セグロカモメについてのまとめです。
- 大型のカモメ類では、最も数が多い。
- 下クチバシに赤斑があり、ヒナにそこをつつかれると、餌を吐き出す。
- セグロカモメの足の色はピンク色。ニシセグロカモメの足の色は黄色。
- 名前の由来について、他のカモメと比べて背が黒いわけではなく、銀色に見えるので、「銀鴎」が適当ではないだろうか。
次回はカイツブリです。