今回はカイツブリです。
名前からいかにも貝を潰してそうな鳥ですが、果たして真相はどうなのでしょうか?
また、カイツブリ親子の厳しい教育現場にもフォーカスを当てましたので、良かったら読んでください。
カイツブリとは
カイツブリ(カイツブリ科)Tachybaptus ruficollisは全長26cmでキジバトより一回り小さい水鳥です。
東北地方より北では夏鳥ですが、それ以南では留鳥です。川や池に棲みます。
におの浮巣
カイツブリの巣は、流れのゆるい川や池の水面上に植物の葉や茎を集めて浮巣を作ります。
いわゆる「におの浮巣」です。「にお=鳰」とはカイツブリの古称です。
浮巣であれば、水位の変化に対応することが出来ます。
カモフラージュの達人
カイツブリは巣の上に4~6個の白い卵をうみ落として温めます。
抱卵中の親鳥が、えさ採りなどで一時的に巣を離れる時には、必ず卵の上に水草などで丁寧に覆いをしてから出かけます。
白い卵はよく目立つので、カラスなどの外敵から守るためだと考えられます。
そして、巣に戻るとその覆いを丁寧にはがしてから、卵をお腹に抱いて温めます。
可愛い子には旅をさせよ
ヒナが小さいうちは、親鳥が背中におんぶしたりしながら、大事に大事に子育てをします。
厳しい野生の世界。
親の命がいつまで持つかは誰にも分かりません。一刻も早く、子どもを一人前にさせようとします。
「可愛い子には旅をさせよ」
親鳥の冷酷な態度は、子ども1人でも立派に生きていけるように願う親心からなのかもしれません。
(3:22)巣から追い出される幼鳥
カイツブリの名前の由来
この鳥がカイツブリだと教えられた時、その名前からこの鳥はきっと貝をつぶって食べるのだろう、と私は信じて疑いませんでした。
その後ずっと気にかけてきましたが、カイツブリが貝を食べているのをまだ見たことがありません。
水面に浮かび上がった時、くちばしにくわえているのはたいてい小魚です。
それなのに、なぜ「貝つぶり」なのだろうと、長い間不思議に思っていました。
文献によるとカイツブリは奈良時代に「にほとり」とか「みほとり」と呼ばれていました。
そして、室町時代になると「にほ」と共に「かいつぶり」の名も現われるそうです。
カイツブリの語源について、『言海』(注)は「掻(カキ)ツ潜(クグリ)ノ略轉カ」としています。
つまり、足で水を掻いては潜るという意味の言葉が略され転訛したのであろう、としています。
そして今日に至ってもほぼ全ての文献がこの説を採用しています。
(注) 大槻文彦 (2004) 『言海』 (筑摩書房)
チチクラゲの新説!カイツブリの名前の由来
なぜなら、足で水を掻いて潜るのはアビの仲間やウの仲間、そして潜水採餌ガモなども同じです。
カイツブリに限った特技ではありません。
したがって「掻キツ潜」を語源とする説には無理があるように私には思えます。
私はカイツブリの「カイ」は、この鳥が川でよく見られることから「川=カワ」に由来すると考えています。
そして「ツブリ」はこの鳥が潜水する時の水音であろうと思います。
この水音は実際には「チョボ」とか「チョブリ」と聞くのが自然の様ですが、「ツブリ」とも聞こえます。
即ち「カワツブリ」が 「カイツブリ」に転訛したものであろうと考えています。
まとめ
カイツブリについてのまとめです。
- 水面上に植物の葉や茎を集めて浮巣をつくる。
- 浮巣からお出かけの際は、卵の上に水草などで丁寧に覆いをして、外敵から卵を隠す。
- 子を大事に育てるが、そのうち冷酷に追い払うようになり、独り立ちを促す。
- 名前の由来の定説:足で水を掻いては潜るという意味の言葉が略され転訛された。
- チチクラゲが唱える名前の新説:「カイ」は「川=カワ」のこと。「ツブリ」はこの鳥が潜水する時の水音から来ている。
次回はウグイスです。