今回はミゾゴイについてです。
絶滅の危機に瀕するかなりレアな鳥ですね。
特徴的なさえずりや、体を細くする隠ぺい擬態、ミゾゴイの名前の由来などについても述べましたので、よかったら読んでください!
ミゾゴイとは
ミゾゴイ(サギ科)Gorsachius goisagi は、全長49cmでカラス大の鳥です。
ゴイサギより一回り小さく、全体に赤褐色の鳥です。
夏鳥として主に本州以南に渡来し、平地から低山の薄暗い林に棲みます。
ボー・ボー・ボー
ミゾゴイの囀りは独特です。
日暮れから夜にかけて鳴くことが多く、「ボー、ボー、ボー」と一声ずつしばらく間をおいて鳴きます。
その声は低音ですがよく通るため、かなり遠くからでも聞くことが出来ます。その鳴き声からウシドリなどの方言名もあります。
徳島市の南端に位置する我が家では、4月下旬から5月上旬に、山麓の林から聞こえてくることが多いです。
隠ぺい擬態
巣は幹から差し出た横枝にかけます。
巣の上のヒナたちは、外敵が近づいたり、大きな音に驚くと一斉に体を細くして垂直に立てて直立不動の姿勢をとります。
すると付近の環境に溶け込み非常に目立たなくなります。
この行動を鳥類研究者は「隠ぺい擬態」と呼んでいます。
世界で1000羽
最近は、ミゾゴイの生息数が激減しています。
環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(2020)に指定されており、世界で1000羽にも満たないといわれます。
最近の個体数激減の原因は定かではありませんが、越冬地であるフィリピンの森林乱開発などが要因ではないかと考えられています。
以前は毎年聞かれたさえずりも、最近は全く聞かれない年が増えてきました。
実は昼行性
これまで、ミゾゴイは夜行性であると考えられていましたが、最近の研究結果では、昼行性であることが分かってきました。(注1)
近年まで夜行性と思われていたのは、個体数が少なく昼間も薄暗い林に棲んで発見されにくく、生態的な観察がほとんどされなかったことに加え、繁殖期前の縄張り確保とメスを呼ぶ鳴き声は夜間によく聞こえるためだろうとのことでした。(注2)
(注1)川名国男(2012)『ミゾゴイ~その生態と習性~』(川名国男)
(注2)そよ風のなかで Part2
ミゾゴイの名前の由来
ミゾゴイの漢字表記は「溝五位」です。
『図説日本鳥名由来辞典』(注1)によれば、「江戸時代前期から“みぞごい”の名で呼ばれる」とあります。
それ以前は“おずめどり”などと呼ばれていたようです。
ミゾゴイの名の由来については、その名前のとおり「溝でよく見かけるゴイサギに似た鳥であるから、ミゾゴイ」というのが定説です。
「溝」とは『学研国語大辞典』(注2)によると「水を流すために地面を細長く掘ったもの」です。
(注1)菅原 浩・柿澤亮三 (1993) 『図説日本鳥名由来辞典』(柏書房)
(注2)金田一春彦・池田弥三郎(1978)『学研国語大辞典』(学習研究社)
チチクラゲの新説!ミゾゴイの名前の由来
なぜなら、ミゾゴイを溝で見かけることは稀であるからです。
溝で見かけるのは、むしろコサギやゴイサギです。
ミゾゴイは暗い林を棲みかとし、サワガニ、ミミズ、小魚などを餌とします。
ミゾゴイの羽毛が赤褐色で、味噌の色に似ているからです。
即ち、ミゾゴイは「味噌色のゴイサギ」、が名前の由来であると考えています。
因みに他のサギ類の名前を見ても、多くは羽毛の色や模様に由来しています。
例えば、しらさぎ、ムラサキサギ、クロサギ、アカガシラサギ、アマサギ、ホシゴイ(ゴイサギの若鳥)、ササゴイなどです。
よく似た体形の鳥を区別するには、羽毛の特徴をとらえるのが一番容易で、しかも覚え易いからだと考えられます。
まとめ
ミゾゴイについてのまとめです。
- 森林乱開発などによって、絶滅が危惧されている鳥。
- 「ボー、ボー、ボー」と一声ずつしばらく間をおいて鳴く。
- 警戒すると、体を細くして直立不動の姿勢をとる「隠ぺい擬態」を行う。
- ミゾゴイの名の由来の定説:「溝でよく見かけるゴイサギに似た鳥であるから、ミゾゴイ」。
- チチクラゲが唱える名前の由来の新説:ミゾゴイの羽毛が赤褐色で、味噌の色に似ていることから「味噌色のゴイサギ」が名前の由来ではないか。
次回はメボソムシクイです。