今回はサシバです。
サシバの鳴き声や、タカ柱、生息数の変化、名前の由来などについて熱く語りますので、良かったら読んでみて下さい。
サシバとは
サシバ(タカ科)Butastur indicusは、全長雄47㎝、雌51㎝でハシボソガラスとほぼ同大の猛禽類です。
本州以西の平地から低山に渡来する夏鳥です。
よく鳴くタカ
タカの仲間ではサシバが一番よく鳴きます。
鳴き声はよく通る澄んだ声で「キンミー、キンミー」と何度も鳴きます。
そこで地方によっては「きんみだか」とも呼ばれます。
サシバの渡り羽数の変化
徳島県鳴門山では毎年春と秋にサシバの渡りが観られます。
秋のタカ渡り観察記録では、30年ほど前までは1日の観察羽数が1万羽を越えることもありました。
そして、ピーク時(9月下旬~10月上旬)では一日だけで2~3,000羽も観察されることもありました。
渡り途中で、数十羽から数百羽のタカ柱もよく観察されていました。
タカ柱とは蚊柱のように多くのタカが集まり、帆翔しながら柱状に舞い上がる現象です。
ところが、徳島県鳴門山では、近年その数が激減し、かつての3分の1(約3,000羽)ほどにまでに減少しました。
年によりかなりの増減はありますが、2019年の秋は3,691羽でした。
そして、2020年秋の観察総数はわずか1162羽でした。これは、過去最少記録です。
サシバ激減の要因
サシバはここ数十年の間に激減しました。
その原因は、農地環境の変化にあるようです。
サシバの主なエサは、カエル類やヘビ・トカゲ類、大型昆虫などです。
近年、農地改良事業により、湿田が乾田化され、また、草の生えた「あぜ道」がコンクリート化されたことが、要因の一つと考えられます。
人工的に水を抜くことができて、地面を乾いた状態にすることができる田んぼを「乾田」という。田んぼが使われていないときに、地面にヒビが入るくらいに乾いている。
水を完全に抜くことができずに、常に地面が湿った状態にある田んぼを「湿田」という。水生生物の貴重な棲み家になる。
参考資料:野菜を売らない農家の家庭菜園
https://vegetable-time.com/kanden-situden-1647
特に「あぜ道」で越冬していたカエルやヘビなどが住めなくなったことが大きな原因だと考えられます。
また、農薬もそれに追い打ちをかけていると考えられます。
サシバの名前の由来
“さしば“の名は鎌倉時代から知られていました(注1)。
名前の由来について『名前といわれ・日本の野鳥図鑑・野山の鳥』(注2)では、「『サシ』は指差しでまっすぐのこと。『ハ』は羽のこと。まっすぐな羽の鳥と云う意味である」としています。
一方、『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(注3)では、「『立ち上る』『一定の方向に直線的に運動する』と云う意味の『さし』に、『鳥』を意味する『羽』がついてサシバ」とあります。
なぜなら、一定の方向に一直線に飛ぶのは、サシバに限らずハチクマもノスリも、あるいは、ほとんどの渡り鷹も同じです。
ただ、種によっては越冬地や繁殖地の違いから逆方向に渡るものがありますが、これとて「一定の方向に直線的に運動する」という意味においては同じです。
チチクラゲの新説!サシバの名前の由来
かつての里山環境は柴山と農耕地が大部分を占めていました。
そこでごく普通に見られた枯れ柴色のこの鳥を、親しみをこめて「柴鷹」と呼んでいたとしても不思議ではありません。
この「柴」が「さしば」に転訛したのではないかと考えています。
そのことをうかがわせるサシバの方言名としては、愛媛県の「しばさかし」、富山県の「からしば」などがあります。
古来日本人が愛してきた国の天然記念物「柴犬」の名は、総頭数の約7割を占める赤褐色の毛色が、枯れ柴(柴赤)に似ていることに由来するといわれます。
サシバの羽色もまた柴犬の毛色によく似ています。
(注1)菅原 浩・柿澤亮三 (1993) 『図説日本鳥名由来辞典』(柏書房)
(注2)国松俊英 (1995)「名前といわれ・日本の野鳥図鑑 ①野山の鳥」(偕成社)
(注3) 安部直哉・叶内拓哉 (2008)『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(山と渓谷社)
まとめ
サシバのまとめです。
- サシバは激減している。湿田が乾田化されたり、「あぜ道」がコンクリート化されたことが要因か。
- 名前の由来の説⑴:「サシ」は指差しでまっすぐのこと。「ハ」は羽のこと。まっすぐな羽の鳥と云う意味で「サシバ」。
- 名前の由来の説⑵:「一定の方向に直線的に運動する」と云う意味の「さし」に、「鳥」を意味する「羽」がついて「サシバ」。
- チチクラゲが提唱する名前の由来:枯れ柴色に見えるため「柴鷹」と呼んでいたのではないか?その「柴」が「サシバ」に転訛したと考える。
次回はカモメです。