ところでみなさん、鼻毛はちゃんと整えていますか?私はときたま出ています。
そんな気になる鼻毛ですが、鳥の中にも鼻毛が生えている種類があります。
ミヤマガラスも鼻毛が生えている鳥です。特に変わった鼻毛の性質をしているので、是非見ていってください。他にも、ミヤマガラスの名前の由来や、夫婦仲についても書いていこうと思います。
ミヤマガラスについて
ミヤマガラス(カラス科)Corvus frugilegusは全長47㎝で、ハシボソガラスよりわずかに小さい鳥です。
大陸で繁殖し冬鳥として全国各地に渡来しますが、局地的です。主に農耕地に棲みます。
ミヤマガラスの鼻毛
一般的に鳥の「鼻毛」というのは、人間でいう鼻の中にある毛ではなく、くちばしの基部(額に近い部分)に生えている毛のことを指します。
こんな感じで、ハシボソガラスの鼻毛はボーボーですね。
続いて、ミヤマガラスのくちばしをご覧ください。
ミヤマガラスの鼻毛はごっそりと抜け落ちて、基部が白くなっています。
これは、鼻毛がもともと生えていない訳ではありません。ミヤマガラスが若鳥の頃には鼻毛はボーボー生えており、くちばしが黒く見えます。
しかし、ミヤマガラスが成鳥になると、なぜか鼻毛が抜け落ちてしまい、くちばし基部の皮膚が露出するために白色になるのです。
ミヤマガラスとハシボソガラスのくちばしの違い
その写真を見ると黒いくちばしの基部が白っぽく写っていました。
さきほど述べた通り、ミヤマガラスの成鳥は、くちばしの基部が白っぽく、これが重要な識別ポイントとなります。
ところが、その写真をよく見ると、くちばしの形がハシボソガラス形であることに気付きました。
- ハシボソガラスのくちばしは、上くちばしの先に近い所で、下にカーブしています。
- ミヤマガラスのくちばしは、カーブがゆるく直線的で尖って見えます。
結局、その人の写真に写っていたのは、ハシボソガラスでした。
くちばしを目を凝らしてよく見ると、くちばしが白く見える部分は、採餌中に付いた泥が乾いて白く見えているのだということが分かったのでした。
ミヤマガラスという名前
ミヤマガラスは、「深山烏」または「深山鴉」と書きます。奥深い山のカラスという意味です。
ところが、ある時ミヤマガラスという名前と実態に大きなギャップがあることを知りました。
かつて(1974年4月)、デンマークのボーンホルム島(Bornholm)の農家(Holmさん宅)で数日お世話になった事がありました。
「バルト海の宝石」と称されるのどかなこの島は、島全体が平らな感じで小麦畑や牧草地が広がっていました。デンマーク産ブルーチーズの本場でもあります。
Holmさん宅も広々とした牧草地や農耕地に囲まれて乳牛を24頭飼育していました。Holmさん宅に到着早々、周辺を散歩していると小さな木立に群れるカラスが目に入りました。
何をしているのか不思議に思い近づいてみると、木々の梢近くに沢山の巣がありました(写真)。
あたかもサギのコロニーのように巣と巣は隣接しており、3~4個の巣が掛かっている木もありました。巣は全部で十数個あり、見上げるといくつかの巣では抱卵中と思われる親鳥のくちばしや尾羽の先がのぞいていました。
以後、私は二つの疑問を抱くようになりました。
ミヤマガラスの2つの疑問
ミヤマガラスの名前が文献に現れ始めたのは江戸時代前期からです。
その頃はミヤマガラスといえばブッポウソウを指していたようです。ブッポウソウは山や森に棲んでいます。
深山に棲むブッポウソウを、昔人が深山烏と呼ぶのは、この鳥の生態と、カラスに似た鳴き声から、なんとなく理解できます。
仏法僧の鳴き声
ミヤマガラスの鳴き声
けれども、その名前がなぜ現在のミヤマガラスを指すようになったのか、その由来が知りたくて幾つかの文献をひも解いてみました。
しかし、残念ながら明解な記述は見当たりませんでした。
因みに、福岡県や佐賀県ではミヤマガラスを「ワタリガラス」と呼んでいます。
なぜならば、日本のカラスの中で最も多く渡来してくるのが、ミヤマガラスだからです。全国各地に渡来します。
今からでもワタリガラスに改名すれば良いと思うのですが、すでに「ワタリガラス」と名付けられたカラスがいます。
しかし、その「ワタリガラス」は、名前の割に渡来する数が少ないのです。
「ワタリガラス」は北海道北部に冬鳥として少数渡来する程度です。ミヤマガラスの方が圧倒的に多数渡来します。
ワタリガラス
つまり、
- ミヤマガラス → ワタリガラスに改名
- ワタリガラス → オオガラスに改名
がしっくりくる名称だと思います。
ミヤマガラスの愛のカタチ
ミヤマガラスの夫婦は仲が良いことで知られており、キスをしたり、夫婦寄り添って眠ることがあります。
ミヤマガラスと徳島県
ミヤマガラスは、九州には以前から冬鳥として毎年渡来していましたが、その他の地域では稀な鳥でした。最近は渡来数が増えて主に西日本に冬鳥として各地で見られるようになりました。
徳島県でも1987年までは確かな観察記録がありませんでしたが、1987年に初めて観察されたのを皮切りに、現在は鳴門市から阿波市あたりまで、主に吉野川北岸沿いの農耕地で冬季普通に見られます。
まとめ
ミヤマガラスについてのまとめです。
- 鼻毛が成鳥になると抜け落ちて、くちばしの基部が白くなる。
- くちばしは直線的で尖っている。
- ワタリガラスに改名してみれば?どう?
- 夫婦仲が抜群に良い。
- 徳島県でも結構見られるようになってきた。
次回は、カルガモです。