ウ科について
四国で見られるウ科 Phalacrocoraxha の鳥はヒメウ、カワウ、ウミウの3種です。
ヒメウとウミウは冬鳥として海に渡来しますが、カワウは留鳥として川と海のどちらにも棲みます。
カワウは1990年代まで稀な冬鳥でしたが、以後渡来数が漸増し県内でも繁殖するようになりました。
鵜飼いについて
「ウ」といえば、鵜飼いを思い浮かべる人が多いと思います。
岐阜県長良川の鵜飼いは有名です。夜、川船に乗ってかがり火をたいて、鵜匠と呼ばれる人が10羽前後のウを操り、アユなどの魚を捕らせる漁法です。
岐阜県長良川の鵜飼の動画
鵜飼いの歴史は古く、古事記にもみられることから、それ以前から行われていたようです。
中国では主にカワウを使っているのですが、一方、日本ではウミウを利用しています。なぜでしょうか。
中国にもカワウとウミウが棲んでいます。しかし、ウミウがいるのは海岸線に限られます。一方、カワウは海岸線と内陸部の両方に棲んでいます。
このため、容易に捕獲できるカワウを利用したと考えられます。
さて、日本の場合はどうでしょう。
古来日本ではほとんどウミウだけを利用してきました。
日本では周囲を海に囲まれているので、海岸線に棲むウミウを利用しやすかったと思います。しかし、カワウも海岸線に棲むため、カワウも容易に利用できたはずです。
しかし、日本ではカワウよりもウミウを優先して利用してきたのです。その理由は次の2点にあると私は考えています。
- ウミウはカワウより少し体が大きいことで、より多くの魚を捕らえることが出来るから。
- カワウよりウミウの方がおとなしく人に慣れやすいから。
(注1) 菅原 浩・柿澤亮三 (1993)『図説日本鳥名由来辞典』(柏書房)
(注2)安部直哉・叶内拓哉(2008)『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(山と渓谷社)
ウの名前の由来
「ウ」とは、何とも短い名前です。
世界で最も短い鳥名であると思われます。その語源について『図説日本鳥名由来辞典』(注1)によると、“う”は奈良時代から知られており、「“う”の語源についてははっきりしたことが分かっていない」と有ります。
また、『山渓名前図鑑・野鳥の名前』(注2)では、「ウは烏(からす)のように全身が黒い。そこで『烏』という漢字の音読み『ウ』を名前にしたのではないか?」としています。
チチクラゲの新説!ウの名前の由来
私はウの語源がアイヌ語にあるのではないかと考えています。
ウのアイヌ語名は [ウリまたはウリリ](注3)です。
北方に棲むウの仲間チシマウガラスPhalacrocorax urileの種名urile(ウリレ)は、「カムチャツカ地方でのこの鳥の呼び名」(注4)をとっています。
また、このウリまたはウリリの「ウ」は、アイヌ語(注5)では「お互いに」という意味があります。
そして「ウウェカラパ」は「集まる」を意味します。ウ科の鳥がよく群れる習性に関係がある言葉と考えられます。また「ウォロ」は「水中」をも意味します。
かつてアイヌ民族は関西周辺にまで住んでいたそうで、地名の「阿波」、「明石」、「富士」などは先住民のアイヌ語に由来するとも云われます。
大和民族が次第に北上する過程で、先住民の地名や身近な動植物の名前、たとえば「ウ」が大和言葉に取りいれられ、同化したとしても不思議ではないと考えられます。
(注3)『アイヌ語の動植物名単語辞典』・ウェブサイト
(注4)内田清一郎・島崎三郎(1987)『鳥類学名辞典』 東京大学出版会
(注5)『スキッピー秘蔵のアイヌ辞典』・ウェブサイト
まとめ
ウについてのまとめです。
- 四国には、ヒメウ、カワウ、ウミウの3種がいる。
- 鵜飼いに使われていたのは、日本ではウミウ、中国ではカワウ。
- ウの語源については、烏のように黒いことから、『烏』の音読みである『ウ』を名前にした説があるが、はっきりと分かっていない。
- チチクラゲが唱える名前の由来の新説:ウのアイヌ語名 [ウリまたはウリリ]が、大和言葉に取りいれられ、同化したのではないか。
次回はミゾゴイです。