今日はずっと紹介したかったサファリガイドの『太田ゆか』さんの特集です。
※この記事は太田ゆかさんご本人に許可を頂いて作成しています。
太田ゆかさんは、南アフリカ政府公認の唯一の日本人女性サファリガイドです。
また太田ゆかさんは、拙作「アンガーデッド」の主人公モデルにさせていただいている方でもあります。
以下の記事では、親の反対を押し切り単身アフリカへ渡った太田ゆかさんのプロフィールや、保護活動の現状と問題点、そして彼女の強い想いを書いていきたいと思います。
太田ゆかさんのプロフィール
太田ゆか(26歳)。
南アフリカ共和国在住の日本人サファリガイド。
幼い頃から動物が大好きだったという。大学2年生の時に環境保護ボランティアとして南アフリカに初めて行き、そこで働くサファリガイドに憧れを持つようになる。
その後すぐに大学を休学。南アフリカへ渡り、サファリガイド訓練学校に入学し、そこで南アフリカ政府公認のサファリガイド資格を取得する。
南アフリカから帰国して大学を卒業するも、南アフリカでサファリガイドとして働くことを決意する。当然両親から猛烈に反対されるが、その意志は固く、ついに両親が折れることとなった。
現在、クルーガー国立公園で働き始めて約6年。環境保全プロジェクトの専属サファリガイドとして活動している。
日本から遠く離れた異国の地で、不便なことは数えきれないほどあるようですが、大好きな場所で大好きな仕事が出来ていることに、充実した日々を送っているとのことです。
サバンナの魅力と現状を日本に広めるべく、様々な情報・写真をインスタグラムなどSNSから発信中です。
太田ゆかさんのインスタでは毎日のようにストーリーズが公開されています。日本では考えられないような非日常的な光景が投稿されています。太田ゆかさんのいきいきとした姿もとても印象的なストーリーズです。
インスタグラム:yukaonsafari
フェイスブック:Yuka on Safari
YouTube:Yuka on Safari
四国よりも広い“職場”
太田ゆかさんが活動している場所、それは南アフリカのクルーガー国立公園。
クルーガー国立公園は、南アフリカ共和国北東部のアフリカを代表する鳥獣保護区です。広さは19,485平方キロメートルで、四国がすっぽり入ってしまいます(四国の面積は18,800平方キロメートル)。
また国立公園周辺には柵なしでつながるいくつもの広大な私営保護区が広がっています。
こうして手付かずの大自然が広がるこのエリアは貴重な野生動物の楽園となっています。
サファリガイドへの誤解
トラ太郎が太田さんを知ったきっかけは「坂上動物王国」という番組でした。
そこで太田さんは現地南アフリカにやってきた坂上忍さんとローラさんとともにサファリを巡り、動物たちが置かれている現状やサファリガイドの仕事を説明していました。
今まで保護活動というものにどちらかというと後ろ向きだったトラ太郎は、南アフリカのサファリガイドという仕事に衝撃を受けます。
なぜならトラ太郎がそれまで勝手に抱いていたサファリガイドのイメージとはかけ離れていたからです。
お分かりいただけますか?銃を持っているんです。
太田さんは銃を持つことについて
- 野生動物と遭遇し万一の事故が起きた時に身を守れるようにするため
- 動物が瀕死の重傷を負った時に安楽死の処置をとる可能性があるため
と説明されていました。
なんだか平和な動物の楽園で楽しそうに観光客とドライブしながらライオンとかの説明をしてるだけと思ってごめんなさい。という思いが込み上げてきました。
例えばバッファローがお客さんを襲い始めるような事態になった時には、ガイドが動物を射殺しなくてはならないことになっています。
そんな緊急事態に人の命を守るために、ウォーキングサファリをするときはライフルの携帯が義務付けられているのです。
もちろん、ライフルを一度も使うことなくキャリアを終えるのがガイドの目標であり責任ですし、そもそもガイドは総じて動物大好きであり、動物を傷つけたくはないのです。
そのため、動物に襲われて発砲せざるを得ない状況に陥らないように、動物の行動を読みながら十分に距離を開け、一歩一歩細心の注意を払いながらガイドをしています。
その後アフリカの密猟問題に興味を持ったトラ太郎は書籍やドキュメントフィルム等で、野生動物達が残酷な方法で密猟されていること、動物を守るレンジャーやガイドは常に危険と隣り合わせであり、実際に密猟者に襲われ亡くなった方もいること、そしてこの残酷な密猟の原因の一端が日本にもあることを知ります。
密漁と日本の関係…太田ゆかさんのCAMPFIREより抜粋
特にサイの密猟は彼らを絶滅の危機に追いやっています。
かつては50万頭いたサイですが、現在は3万頭もいないと言われています。
このままでは現代の子供たちが大人になる頃には、サイが野生からいなくなってしまうかもしれません。サイの密猟が後を絶たないのには、サイの角に対する需要の高さが原因となっています。
現在はサイの角1本が2千万円以上の値段で取引されるほどです。その需要の理由には中国とベトナムが大きく関係しています。
中国では頭痛からガンまで様々な病気を治してくれる漢方薬として信じられています。
二日酔いにまで効くと言われていたりします。
実際には人間の爪や髪と同じケラチンという物質でできていて、このような効果は科学的に全く証明されていません。
ベトナムでは富裕層のステータスの象徴として置物や装飾品として求められています。またあまり知られていませんが、実は日本もその需要に起因していた背景があるのです。
1980年まではなんと日本がサイの角の消費国第一位だった過去があります。このようなアジアでの需要によりサイの角は超高値で売買されています。
私たちアジア人そして日本人としてこの問題にどう取り組んだら良いのでしょう?
太田ゆか「コロナになるまで、私が3年間以上活動していた保護区のシロサイの女の子😢
私たちの間ではオリビアと呼んでいました。
実は今週月曜に密猟者によってそのオリビアが殺されたという連絡がありました。
実はこの子のお母さんもこの保護区で密猟の犠牲になっています。
当時たった生後4ヶ月だったオリビアの目の前で、母サイは残虐に角のために殺されました。
オリビアは孤児となりリハビリセンターに送られ、人間に育てられました。
でも数年経ち無事に健康に育つことができたので、再び元の保護区の野生の中に戻されました。
そのたった一年半後オリビアも密猟の犠牲になるなんて、、
きっと保護区の人たちすごく心を痛めていると思います😢」
太田ゆかさんの想い
サイのツノを守るために太田ゆかさんは奔走しています。その方法や現状はどうなっているのでしょうか?
サイを密猟から守るために現地では毎日、密猟取締隊やサファリガイドがパトロールをしています。
密猟者の足跡や残された痕跡を探したり、追跡する地道な作業です。
これ以外にも「サイの角を短くする」という手法があります。
角だけのためにサイは殺されてしまっています。
なのでその角をなくせば、密猟者にとってもわざわざサイを殺すメリットがなくなるため、密猟されるリスクを一気に下げることができるのです!
この作業は獣医の監督のもと行えば、サイに危害をくわえることなく安全に角を切ることができます。
そのやり方はまずヘリコプターで上空からサイに麻酔銃を撃ち、グラウンドチームが急いでサイのところに行き、耳と目を隠し治療を開始します。
その後はチェーンソーとやすりを使ってギリギリのところまで短くするのです。
人間が爪や髪を切るのと同じように、サイの角を切るというわけです。
太田ゆか「サイの角処置保護活動が無事に終了しました。
日本の皆さまからのご支援があったからこそ、実現できた今回の密猟対策の活動!
日本人として本当に誇り高いし、感謝の気持ちでいっぱいです。
リターンとして今回の様子は生中継されました。
天候、電波、サイの居場所、色々なことが揃わらないと実現できないバーチャル保護活動🚁📡
1日目は5時間の捜索にも関わらず、失敗に終わりました。
しかし2日目にはなんと、5頭一緒にいるところをヘリから発見!一日のオペレーションで計6頭の処置ができるというミラクルが起きました✨
みなさんの熱い応援が幸運を呼んだのかも!
1頭目のシロサイは素敵な支援者様が旭くんと名付けてくれました🦏
サイに痛みはないとはいえ、角処置はあくまで絶滅から守るための最終手段です。
こんなことをしなくても、サイが密猟により殺されない世界が理想です。
引き続き日々の保護活動がんばるので、応援どうぞ宜しくお願いします😭💕」
このように、クラウドファンディング(CAMPFIRE)の結果として、サイの角切りに成功することができました。サイを密猟者から守る処置が出来たのです。
実は、クラウドファンディング(CAMPFIRE)を太田ゆかさんが企画された際に、トラ太郎もクラウドファンディングに参加し、太田さんから環境保護活動の現状について直接教えていただきました。
環境保護活動はクラウドファンディング以外にも、誰でも簡単に行えると太田ゆかさんは言います。
環境保護活動は決して敷居の高いものではなく、とにかく問題を知るだけで十分です。ただ問題を知るだけでも、保護活動になると言います。
問題を知ることによって、その人の意識が少しずつ変わっていくからです。
日本のような都会で生活をしていると、人間は自然から独立していると考えがちになり、人間が動物の一種であることを忘れることがあります。
しかし、人間は自然を支配している存在ではありません。
人間は自然がなくては生きていけない、自然とつながり続けてきた生き物なのです。
生態系が少し乱れただけで絶滅する動物がいるように、人間もまた何かしらの自然の変化によって危機に瀕することがあるのです。
南アフリカだけではなく、日本を含めた世界各地の環境の変化を知るように心がけることで、無意味な開発や、乱獲、外来種の脅威、気候変動、環境を脅かす法律等に対して目を向けることが出来るようになります。
この開発は環境に良くないのでは?この法律は自然にとって脅威なのでは?など、環境問題を知ることで、気が付くことが増えます。
意識が変われば、気が付くことが増え、自ずと行動が変わります。
何かしらの環境問題に気が付いた時、私たちがそれを危険だと思えば、そのことを誰かに伝えたり、あるいは寄付をしたり、投票先を変えたり、さまざまなアクションを起こすことができます。
そうすることが環境を保全することにつながっていきます。
SDGsに代表されるように、持続可能な社会を実現することが世界の目標となっている現在。
子どもたちの未来のためにも、まずは太田ゆかさんの活動に目を向けて見るのも良いのかもしれません。
インタビューも掲載して頂きました。よろしければご覧ください!→【SDGs漫画】アフリカゾウ絶滅まであと一世代。密猟問題の怖すぎる現実を描いた漫画に考えさせられる