こんにちは、漫画原作者のヲヲクラゲです。
この記事からは、漫画の構成方法についてです。
漫画ではどんなタイトルやストーリーがウケるのでしょうか?
実は、漫画には、こうすれば「ウケやすい」というタイトルやストーリー・構成があります。これから述べる方法をマネすれば誰でも80点以上のタイトルやストーリー・構成になると思います。
いつもの通り、私が作ったネームノートから漫画の構成方法についてご説明します。
ひとこと
これから描こうとする漫画を「ひとこと」で言い表したらどうなるか考えてみましょう。それがサッと言葉に出ないのであれば、作者自身が物語の肝を掴み切れていないのかもしれません。
まず、その物語にとって一番面白い要素はなんですか?それは、ひとことで言えるくらい簡単なモノでしょうか?
それは、まだ作品が煮詰まっていない、ということの他に、読者に向けて効果的な宣伝が出来ない、という意味でもあります。
読者も私たちと同じ人間ですから、仕事や生活があって日々を忙しく過ごしています。すべての漫画を最後まで読んでくれる時間も体力もないのです。
逆に言えば、漫画を「ひとこと」で表現できて、なおかつ読者の興味を惹き付けられると、その漫画を読者は覗いてくれます。
ログライン
ログラインという脚本用語があります。ログラインは、ストーリーを一行で簡潔に言い表すことです。先ほど述べた、「ひとこと」でストーリーを表現するということですね。ストーリーを作る際には、何よりも先に、ログラインを完成させましょう。
その逆もまた然りで、ログラインが曖昧、または面白くなければ、ストーリーを作っても、ぼやけていたり、面白くないものが出来てしまいます。
ログラインの基本的な構成としては、
- 「主人公が」
- 「どのような状況で」
- 「何をするか」
です。
例えば、おとぎ話の【浦島太郎】であれば、
- 「亀を助けた釣り人が」
- 「海中にある城で乙姫たちの接待を受けるが」
- 「禁断の箱を開けてしまう」
というように、一文で物語の核となる説明ができることが望ましいです。
3要素
一行で説明できたとしても、その文章自体が面白くない場合があります。興味を惹くような要素を文の中に組み込みましょう。その要素は3つありますので、それぞれ紹介していきます。
まず1つ目の要素として、「予想を裏切る」が挙げられます。簡単に言うと、当たり前の流れにならない、ということです。
例えば、
- 「警官が」
- 「泥棒に出くわして」
- 「逮捕した」
というログラインであれば、日常的な事件であり、面白みに欠けます。
では、
- 「警官が」
- 「泥棒に出くわして」
- 「恋をした」
であれば、ちょっと面白くなります。その先の展開が気になりますね。普通では起こりにくそうな流れを考えるだけでいいのです。
2つ目は「インパクトのある主人公」を表現することです。
さきほどの例でいえば、
「警官が」「泥棒に出くわして」「恋をした」よりも、
- 「不治の病の警官が」
- 「軽音楽日本一の泥棒に出くわして」
- 「恋をした」
というのであれば、警官と泥棒の2人の主役の個性がなんとなくイメージできて、少し興味が出てきます。
3つ目は「本能的な欲求」が表現できていることです。
本能的な欲求から目的が生まれます。主人公たちの行動はすべて、本能的な欲求が原動力となっています。行動に説得力を持たせるために、欲求が何であるかを具体的に書いておきましょう。病と闘う警官が、泥棒の演奏で癒されて、その泥棒を好きになったのであれば、
- 「不治の病の警官が」
- 「軽音楽日本一の泥棒に出くわして」
- 「心を癒す指先に恋をした」
等としておくのも良いのかもしれません。
タイトル
タイトルもログラインの一部と考えることもできるでしょう。しかし、ログラインよりもより短くても構いせん。ほんのひと単語で、読者の心を惹きつけることも可能です。
ここでは、比較的に短いタイトルについて考えてみましょう。
主人公のイメージ
漫画は必ず主人公が登場します。その主人公の視線を通して、物語が紡がれていくため、主人公のキャラクター性とタイトルというのは深い関係があります。
変な組合せ
思いもよらない2つの単語の組み合わせ、というのも興味を惹きますね。
「3月のライオン」「弱虫ペダル」「宇宙兄弟」など、挙げるとたくさん出てくると思いますが、簡単な言葉と難しい言葉、壮大な言葉と身近な言葉、などギャップのある言葉を組み合わせたりするのも良いかもしれません。
ストーリーを象徴
タイトルでその漫画のストーリーや世界観を言い表せたらすごく良いですね。
「鬼滅の刃」「キングダム」「コウノドリ」「呪術廻戦」など、読む前からなんとなーく内容が分かりそうな感じの漫画も、読者が手に取りやすくて良いと思います。
粘り
ログラインとタイトルが完成するまでは、ネームに取り掛かるのはやめておきましょう。まずは、漫画を「ひとこと」で魅力的に説明できて、しかもタイトルも興味を惹き付けるものを用意します。
その2つの出来が悪ければ、完成した漫画はやっぱりちょっと面白くないはずです。
セントラルクエスチョン
ここから、漫画の構成に入っていきます。
まず、漫画を構成するに当たって「セントラルクエスチョン=CQ」という要素が必要になってきます。
セントラルクエスチョンは、その名の通り「中心的な疑問」です。
例えば、主人公と敵対する凶悪犯が登場する漫画であれば、その凶悪犯を主人公は倒すことができるのか?ということが、この漫画のセントラルクエスチョンになります。
そして、そのセントラルクエスチョンを解くことによって、主人公の欲求が満たされなければなりません。
凶悪犯は主人公の家族をずっと狙っており、主人公は必死に阻止しようとするが、凶悪犯を止めることができなかった。セントラルクエスチョン=「凶悪犯を倒すことが出来るのか?」
すでに凶悪犯は家族に手が届く位置まで近づいている。
そして凶悪犯の刃物は家族の喉元に触れる。
しかし、ギリギリのところで助けることが出来て、凶悪犯を一掃できた。
それによって、主人公の家族を助けたいという欲求は満たされ、物語は終わりに向かう。
つまり、欲求が満たされ、物語が終わるキッカケとなるものがセントラルクエスチョンの解決なのです。
それまではセントラルクエスチョンを解くために主人公がずっと四苦八苦することになります。読者には「こんな無理難題、本当に解決できるのか」と、ハラハラしながら見てもらえれば最高のセントラルクエスチョンということになりますね。
それぐらい読者を引き付けるためには、セントラルクエスチョンの解決が、主人公にとって最も大事なことであり、誰よりも一番望んでいなければなりません。
セントラルクエスチョンが解決できなくても、主人公には大したダメージがない、という状況では読者も力が入りません。主人公の命と同等に重大なことに設定しましょう。
ビートシートと起承転結
漫画は「起承転結」や、映画でよく使われる「3幕構成」などを取り入れて、構成されることがある様です。
私が構成方法として、感銘を受けたのは、ハリウッドで最も成功した“競売向け脚本家の一人”と言われる故ブレイク・スナイダーの著書の「save the cat(猫を救って)の法則」です。
ブレイク・シュナイダーは、「ビートシート」というものを提唱し、物語を15のビート(見せ場)に分解しました。
- オープニングイメージ(1%)
- テーマの提示(5%)
- セットアップ(1~9%)
- きっかけ(11%)
- 悩みのとき(11~14%)
- 第一ターニングポイント(23%)
- サブプロット(27%)
- お楽しみ(27%~50%)
- ミッド・ポイント(50%)
- 迫り来る悪い奴ら(50%~68%)
- すべてを失って(68%)
- 心の暗闇(68%~77%)
- 第二ターニングポイント(77%)
- フィナーレ(77%~100%)
- ファイナルイメージ(100%)
このように、映画全体を細かく15個のビート(見せ場)で区切って分析しています。
例えば、「11.すべてを失って」のビートは68%なので、仮に100ページの漫画であれば、68ページ目に「すべてを失って」が来るということです。48ページの漫画であれば、48ページの68%なので、33ページ目ぐらいに来ることになります。
そして私は、基本的には、ビートシートを中心としながらも、「起承転結」の要素を組み合わせた構成方法を取っています。
「起承転結」は日本人に馴染みがあるということと、4つのパートだけなので、大まかな流れがイメージしやすいのです。
「起承転結」と「ビートシート」の関係を独自に解釈してみると、
- 起…オープニングイメージ、テーマの提示、セットアップ、きっかけ
- 承…悩みのとき、第一ターニングポイント、サブプロット、お楽しみ、ミッドポイント
- 転…迫りくる悪い奴ら、すべてを失って、心の暗闇
- 結…第二ターニングポイント、フィナーレ、ファイナルイメージ
に分類できます。
まとめ
漫画の構成術は
- ひとこと!…納得のいくログラインとタイトルが出来るまで粘り強く考える!
- ログライン!…「予想を裏切る」「インパクトのある主人公」「本能的な欲求」を組み込む!
- セントラルクエスチョン!…作中最大の障壁!解決できれば主人公の全てが報われる!
- 起承転結!…ビートシートとうまく組み合わせて使う!(詳細は別記事で)
次回は、【起承転結の「起」。読者を釘付けにするテクニック!】です。宜しくお願い致します。