【漫画の描き方⑤】起承転結の「承」。平坦なパートにしてませんか?

ヲヲクラゲ

おはようございます。漫画原作者のヲヲクラゲです。
今回は起承転結の「承」について、私の経験と知識を用いて、新しい視点からご紹介します。

「承」はちょっとイメージしづらいパートかもしれません。そもそも「承」なんて要るの?と思う方もいらっしゃいます。しかし、実はかなり重要なパートでして、この部分はとても面白いことが沢山起こります。

 

それはどういう意味でしょうか?

まずは「起承転結」の「承」を大まかな流れでイメージして、次に、ブレイク・スナイダーのビートシートを用いて、細かく分解して描いていくようにしましょう。

 

私が書いた「サンプル」を、各ビートに載せてあります。参考にして頂ければ幸いです。

いつものように、私が作ったネームノートを参照しながらご説明します

全48ページ。ネームのコツを書き記したノート。

 

 

承は波乱万丈

自著。わたあめに出会って翻弄される。画像をタップで読めます。
起承転結の「承」の本来の意味は、漢詩でいうところの、「承句」にあたり、「穏健」に作るべきとされています。

 

前回の記事では「起」は「起爆」と考えました。ということは「承」では、すでに物語は爆発しています。「きっかけ」で人生が一変している主人公がいるのです。ここでトーンダウンしてしまうのはもったいないと思います。

激しい爆風を利用して、主人公にはさらなる波乱万丈のステージを用意しましょう。その間に転・結に向けての伏線を仕込むことも忘れてはいけません。

 

ヲヲクラゲ
承のパートではいつも「主人公は波乱万丈になっているか?」と自問してください。このパートを平坦なストーリーにする意味は特にないと考えます。

 

 

悩みのとき(11~14%)

自著。悩んでいる主人公。画像をタップで読めます。

 

ここからは、ブレイク・スナイダーのビートシートを参考にしながら、「承」のパートを分析していきます。

承のパートは

  • 悩みのとき(11~14%)
  • 第一ターニングポイント(23%)
  • サブプロット(27%)
  • お楽しみ(27%~50%)
  • ミッド・ポイント(50%)

※()内の%は漫画のページ数に対してのパーセンテージを意味しています。

となっています。順に説明していきます。

「承」のはじめに来るビートは、「悩みのとき」です。

 

きっかけ」で人生が一変した主人公は、その事件を解決できるかどうか、悩みます。

  1. 自分にはそんなこと不可能かもしれない
  2. でも、それを解決しなければ私は悔しくて眠ることすら出来ない
  3. でもやっぱり無理だ…。

激しく葛藤します。今までの人生とは違う道を歩もうとしているからです。その一歩を踏み出す勇気が出ません。そのことで大いに悩むのです。

サンプル「起~きっかけ」

高校サッカー部のゴールキーパーが主人公。高校3年生、

最後の大会。そして初めての試合出場が予定されていた。不安もあったが、3年間ずっと耐えてきてつかみ取ったレギュラー。大活躍しようと闘志を燃やしていた。

主人公には夢があった。

「日本最高のゴールキーパーになること」

それはつまり、最後の全国大会に出場し、大活躍して優勝することだった。今までの努力が報われて欲しかったし、勝利の歓喜を仲間たちと分かち合いたかったのだ。

それだけサッカーが好きであったし、ゴールキーパーというポジションがとことん好きだったのだ(彼には憧れのイタリア代表ゴールキーパーがいた)。

チームメイトもその夢に賛同してくれた。

しかし、実はチームメイトは、全国大会で優勝することは「夢物語」にしか思っていなかった。実力のあるチームではなかったのだ。主人公の努力だけはチームメイトは認めていたが、それだけで大会で優勝できるとは到底思っていなかった。

主人公は冗談の通じない、なんでも真に受けるタイプだったため、否定して傷つけないように話を合わせていたのだ。

そんな時に現れた、一人の転校生。彼は性格がとても悪く主人公やチームメイトに嫌味や皮肉を何度も言ってくる。しかし、彼は天才ゴールキーパーだった。ここまでが「セットアップ

すぐさま正ゴールキーパーの座を奪われ、主人公は監督に補欠を言い渡されてしまう。ショックで立ち上がれない主人公。この一節が「きっかけ

試合で大活躍して日本最高のゴールキーパーになるどころか、試合にすら出場できないのです。主人公にとっては、辛くて仕方ありません。しかし、相手はどう見ても太刀打ちできないほどの能力を持ったゴールキーパーだったのです。

 

サンプル「悩みのとき」

試合まであと10日間。

転校生より優れた能力を得ることは、不可能…。でも、何としてでも試合に出たい。そのためには、彼に打ち勝ちたなければならない。

しかし、自分にはできないプレーを、当たり前のようにする彼に、勝てる気がしない。でも…。

主人公は、大いに葛藤するが、まだ答えは出ない。そんな時でも、サッカーの試合をテレビでつけていた。

憧れのイタリア代表ゴールキーパーが出場していたからだ。試合が終わり、そのゴールキーパーがMOMインタビューでこう答えた。

「諸君、いつでもゴールキーパーの上達の仕方を教えるよ」

ただのリップサービスであったが、なんでも真に受ける性格の主人公はハッと気づく。

「転校生より上手い人に教われば良いんだ。それもとびっきり上手い人に…!」

彼は残された10日間で、ゴールキーパーの聖地、イタリアへ旅立つ決心をするのだった。

……このサンプルはちょっとギャグテイストですが、大体こんな感じで、悩みながらも、自ら奮起して新しい一歩を踏み出す決心をするのが、この「悩みのとき」となります

 

 

第一ターニングポイント(23%)

自著。勇気を出してわたあめを買う。画像をタップで読めます。

 

第一ターニングポイントは、世界の転換期といえます。自らの人生が変わってしまい翻弄されていた主人公ですが、今回は自ら新しい世界に飛び込むのです。

変わってしまった人生を取り戻すために、もしくは、新たな人生を作るために、主人公が勇気を出して一歩踏み入れた瞬間が第一ターニングポイントとなります。

 

先ほどのサンプルの続きで言えば、

サンプル「第一ターニングポイント」

イタリアに飛んだ主人公。

イタリアの観光地には目もくれず、クラブハウスに直行する。クラブの管理人に、身振り手振りで状況を説明する。怪訝な顔をする管理人。

追い返されそうになったその時、あのイタリア代表ゴールキーパーが姿を見せる。

視線が合う主人公とイタリア代表ゴールキーパー。

イタリア代表ゴールキーパーはすぐにクラブハウスに招き入れた。イタリア代表ゴールキーパーのずば抜けた洞察力は試合以外でも際立っていた。

主人公が自分に好意を持っており、しかもゴールキーパーの練習をしたいことをすぐに理解していたのだ。

イタリア代表ゴールキーパーは冗談ばかり言っていた。管理人や、クラブスタッフ、選手たちを笑わせながら、日本から来た少年を紹介した。イタリア代表ゴールキーパーがいるだけで、周りが朗らかになる。

主人公は、イタリア代表ゴールキーパーに師事し、名門クラブハウスで練習する許可を得たのだった。この一節が「第一ターニングポイント」

冗談の通じない真っすぐな主人公と、冗談ばかり言う最強のイタリア代表ゴールキーパーという2人が出会って、一新された世界で漫画が展開していくことになります。

 

サブプロット(27%)

自著。愛し合う二人。画像をタップで読めます。

 

サブプロットというのは、メインプロットから「少し」脱線する物語です。サブプロットはラブストーリーであることが多いです。また、セットアップで示されなかった「新キャラクター」を登場させても大丈夫です

 

サブプロットでは、第一ターニングポイントでの緊迫した展開との落差を演出します。しかし、サブプロットでもテーマは提示されなければなりません。テーマの内容はメインプロットと同じです。

 

上記しているゴールキーパー漫画の例で言えば、

テーマは「人一倍の努力をし続ければ願いは叶う」というものです。サブプロットでもそのテーマは漂います

 

サンプルのサブプロットとしては、

サンプル「サブプロット」

主人公はサッカーのクラブハウスで、イタリア人の女の子と出会う。

彼女はクラブハウスの清掃のバイトをしている。身振り手振りで会話をする内に、主人公とその女性はお互いに恋に落ちていく。

彼女がバイトをしているのには実は理由があった。

幼い弟と妹を養っているのだ。彼女は一人親家庭で育ち、家は貧しかった。バイトをして、バイトが終われば勉強をして、大学の特待生に選ばれるのが目標だった。

特待生は学費の全てが免除される。

主人公とその女性は、お互いの人並み以上の努力を尊敬し合っていた。

ここからは終盤の話になりますが、彼女の努力が実り、彼女は特待生として試験に合格します。その報せを知った主人公は、努力と粘り強さの大切を改めて知ることになり、難題を解決する一助となります。

 

ヲヲクラゲ
このように、サブプロットは、ラブストーリーとしての面白さに加え、テーマを補強しつつ、最終的にはメインプロットと合流して、セントラルクエスチョンを解決する一因として作用します。

 

 

お楽しみ(27%~50%)

自著。画像をタップで読めます。

お楽しみ」とは漫画の中で最も「軽い」部分です

 

主人公がすることは、何もかもが上手く行きますし、悪役・ライバルを凌駕するような能力を手に入れたような演出がなされます。アクションやお色気、お笑い、ド派手な演出はここで行われます。

 

サンプルで言えば、

サンプル「お楽しみ」

主人公は、最強のイタリア代表ゴールキーパーと特訓を行い、とてつもない技術を吸収していく。

知らなかったことを沢山習得していき、オリジナル技を含めて、様々な技を体得する。

イタリア代表ゴールキーパーの練習態度や哲学にも触れる。(←ここは伏線として強く作用する)

性格の異なる2人の掛け合いは漫才のように面白い。

女の子との恋も進展し、デートに行ったり、一緒にサッカーをしたり、手をつないだりして仲が深まっていく。

このように、主人公にとってプラスとなるようなことが連続するのが「お楽しみ」です。どのイベントも派手な演出で盛り上げると良いでしょう。

 

しかし、ここでもセントラルクエスチョンを解決するための伏線を作っておくのを忘れてはいけません。イタリア代表ゴールキーパーが何気なく言っていた哲学や、厳しい練習中にも関わらず、冗談を言って練習を楽しもうとする姿、女の子が努力して特待生になろうとしていること等です。

 

それらは、後に主人公が絶望したときに思い出し、解決のヒントとなるカギなのです。しっかりと提示しておきましょう。

 

 

ミッドポイント(50%)

自著。主人公は最高潮。画像をタップで読めます。

 

ミッドポイント」は「お楽しみ」の終わりを意味します

主人公は「お楽しみ」でどんどんと強くなっていき、物事もすべて上手く進んで行きます。その最高潮が「ミッドポイント」ということになります。

しかし、それと同時に、主人公が最悪の事態に陥るきっかけが始まるポイントでもあります

 

サンプルで言えば、

サンプル「ミッドポイント」

主人公は、イタリア代表ゴールキーパーとの特訓で、ライバルの転校生よりも上手くなった。

女の子に告白して彼女になってくれた。

「高校全国大会の決勝まで進み、必ず優勝するから、その試合を見に来て欲しい」とお願いし、彼女は見に行くことを約束する。

そして、日本へ帰国する時がやってくる。

日本へ帰ってみると、部活の状況は一変しているのであった。この一節の直前までが「ミッドポイント」

このミッドポイントをもって、「承」は終わりとなります。

 

最悪な状況に悩み苦しみ、そして新しい人生を歩み、新しい人物と出会い、彼女まで出来たが、再び最悪な事態に陥ろうとする。そんな波乱万丈なパートとなります。

 

ヲヲクラゲ
また、「お楽しみ」では、面白く派手な演出を軽い気持ちで描いて構いません。作者のセンスが問われますが、十分に楽しんで描いてみましょう。

 

まとめ

自著。画像をタップで読めます。

 

【起承転結の「承」】のまとめです。

  1. 波乱万丈!…最悪の状態に悩み、そして人生の絶頂へ!
  2. 新キャラクター!…ラブストーリーが始まるが、テーマは不変!
  3. 楽しい!…「お楽しみ」は軽いノリで、作者の好きなことを絡めて派手に面白く!

 

ヲヲクラゲ
あくまでも私独自の観点からの漫画講義ですが、ほんの少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

参考書籍はこちらを参照ください。

 

次回は、【起承転結の「転」!人を魅了する「絶望」のからくり】です。宜しくお願い致します。

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