小さい頃に怪我で入院してリハビリを行ってもらったことがある方は、理学療法士か作業療法士の先生にリハビリをしてもらったと思います。そのリハビリのおかげで今元気に生活を送ることができ、「将来は先生と同じリハビリの仕事に就きたい」と思っている方はいるのではないでしょうか。
でもリハビリの先生を目指すときに、
- 理学療法士と作業療法士って何が違うのかな?
- どっちを目指せば良いのかな?
- リハビリの他にはどんな仕事をしているのかな?
などなど疑問に感じますよね。私も理学療法士を目指すまでは理学療法士と作業療法士の違いなんて全く知りませんでした。
なので今回は現役理学療法士で養成校在学中は成績上位だったトリオが
- 理学療法士と作業療法士の違い
- 理学療法士はどんな仕事をするのか
- どうやって理学療法士になるのか
などについて解説していきたいと思います。
理学療法士について分からないことがある方はぜひ参考にしてみてください。
理学療法とは
理学療法士が行う治療は「理学療法」と呼ばれます。
堅苦しく言うと理学療法とは
「身体に障がいのある者に対し、主としてその基本動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること」 引用元:理学療法士及び作業療法士法
と定められています。
この基本的動作能力とは「寝返る、起き上がる、座る、立ち上がる、歩く」等の私たち人間が普段何気なく行っている日常生活動作のことを指します。
子どもがいる方は赤ちゃんの成長過程を想像してもらえればイメージしやすいと思います。 赤ちゃんはまず寝返りができるようになって、起き上がり、腰がすわって自分で座れるようになり、つかまり立ちをするようになって自分で立てるようになり、最終自分で歩くようになりますよね。それが日常生活動作と言われるものです。
つまり理学療法士は、病気や怪我、加齢によって身体機能や運動機能の低下が起こっている方に対して、日常生活動作の獲得または改善を目標としそれに向けて運動療法や物理療法を用いて治療を行う専門科ということです。
ちなみに理学療法は「医師の指示のもと」でしか行うことはできません。
みなさん風邪をひくと病院へ行き診察してもらい「処方箋」をもらい薬局で薬をもらいますよね。
医師の診断を受け「リハビリ処方箋」をもっていき、リハビリをしてもらうという流れになります。
理学療法士の仕事内容
理学療法士の仕事内容は、入院または外来通院する患者様や老人ホームやデイケアなどの介護施設で利用者の方に理学療法を行うことが主な仕事となります。
理学療法士が行う具体的な仕事内容は以下の通りです。
運動療法
関節可動域訓練、筋力強化訓練、日常生活動作訓練(ベッド上での寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位保持、歩行訓練など)
物理療法
電気治療(干渉波治療等)、温熱療法(ホットパック、パラフィン浴等)、寒冷療法(アイスパック、コールドスプレー等)、牽引療法(頸椎牽引、腰椎牽引等)、水治療法(渦流浴、気泡浴、運動用プール等)
住環境整備
患者様の家に家屋調査に行き階段やお風呂、トイレに手すりが必要かどうか判断したり、場合によっては住宅改造の提案、福祉用具のアドバイスを行ったりします。
他職種との連携
理学療法士は医師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、介護福祉士、管理栄養士等と連携し患者様をサポートします。
患者様のリハビリ状況を医師に伝えたり、今の体調を看護師に聞いたり、退院先をソーシャルワーカー、ケアマネージャーと相談したり、お部屋での様子を介護福祉士に聞いたり様々な職種と連携しなければならないためコミュニケーション能力も必要となります。
研修会への参加
研修会への参加は強制ではないですが、治療技術等は日々進化していくため、知識・技術を取り入れるためには研修会への参加は必要となってきます。
また、職場によって違いますが一つの分野を突き詰め、論文を作成したり、理学療法士協会で自分が担当した患者様のリハビリをどのように行ったかを発表する症例発表会などもあります。
記録・書類の作成
実施したリハビリ内容の記録や患者様が入院・退院した時には報告書の作成を行います。これをリハビリしている時間以外でしないといけないので結構時間かかります。特に新人にうちはまだ業務内容が把握できていないのでとっても時間がかかりますね。
実習生の指導
施設側が実習生の受け入れをしている場合は、後輩育成のため実習生の指導を行います。実習生よりも知識不足だと指導はできないので恥ずかしいですよね。だから仕事しながらも勉強は欠かせません。
インプットも大事ですがアウトプットも大事です。自分が勉強したことを実習生に教えれることができるようになればより知識の定着につながると思います。
理学療法士になるには
理学療法士になるためには学校に通い、国家試験の受験資格を取得し、試験に合格しなければなりません。
手順は以下の通りです。
理学療法士国家試験の受験資格を得る
理学療法士国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣に指定されている養成校にて定められたカリキュラムを収めて卒業する(卒業見込みも含む)必要があります。
養成校は4年制大学、3年制短大、専門学校(4年制、3年制、夜間部)などがあります。
特例として、作業療法士資格を取得している場合は、一部のカリキュラムを免除されるため、養成校で2年以上学ぶと国家試験受験資格を得ることができます。
理学療法士の国家試験に合格する
年に1回、毎年2月に行われる国家試験を受験し合格する必要があります。
年に1回きりのため、もし不合格となるともう1年勉強し直さないとしないといけないので、とてもプレッシャーのかかる試験です。
国家試験の合格率や合格できる勉強法はこちらです。
免許申請を行う
国家試験に合格し理学療法士免許の申請を行うと、厚生労働省の名簿に登録されます。そこで登録されると理学療法士として働くことができるわけですね。
大抵の養成校では国家試験を受験する前に就職試験を受け、内定をもらうことが多いです。国家試験に合格すれば、内定をもらった場所で4月から勤務する流れになります。
理学療法士の主な就職先
理学療法士は以下のような職場で勤務しています。
医療
病院(急性期、回復期、慢性期)、クリニック
介護施設
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、サービス付き高齢者住宅、デイサービス、デイケア
福祉
身体障がい者療護施設、総合療育センター
教育
養成校教員、特別支援学校
トレーナー
アスリート専属トレーナー、プロスポーツのチームトレーナー
理学療法士と作業療法士の違い
理学療法士と作業療法士は混合されがちですが、仕事内容や対象疾患、活躍の場に違いがあります。
作業療法は法律では
「身体又は精神に障がいのある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作、その他の作業を行わせること」
と定められています。
理学療法士は基本的動作(起きる、座る、立つ、歩く等)を中心にリハビリを行うのに対し、作業療法士は応用的な動作(着替え、入浴、排泄等)や掃除・洗濯・料理等の家事動作、手芸・工作など余暇活動にもアプローチしていきます。
また作業療法士は統合失調症やうつ病などの精神障害の患者様も対象としており、より幅広く多くの現場で活躍しています。
理学療法士か作業療法士か迷った時は
理学療法士が行う基本動作のリハビリは主に体幹と脚が使われるので体幹や脚の知識が豊富になります。例えば膝の人工関節置換術を行った方や脚の骨折した方のリハビリは理学療法士が担当します。
病院では「脚の先生」と呼ばれることもあります。もちろん学校では脚だけではなく全身の勉強をします。
作業療法士が行う応用動作は手を使うものが多いので手に関しての知識が豊富になります。例え手の骨折のリハビリは作業療法士が担当します。
病院では「手の先生」と呼ばれることもあります。もちろん学校では手だけではなく全身の勉強をします。
理学療法士になるか作業療法士になるか迷った時はどちらに興味があるか考えてみてください。
また以下のポイントを参考程度に確認してみてください。
理学療法士
- スポーツが好きな人
- 体を動かすのが好きな人
- 体力がある人
- 身体の機能や構造など細かい部分まで勉強したい人
作業療法士
- ポジティブな人
- 話の聞き上手な人
- 手先が器用な人
- 人を喜ばせるのが好きな人
理学療法士の年収や給料
理学療法士は医療職ですが年収は意外と低いです。
平均年収は約366万円とされています。(厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査より)
就職する場所によっても月収にはばらつきがありますが手取り23〜25万円前後ではないかと思います。
理学療法士の求人の探し方
就職を考えたときに探す方法はいくつかあります。自分の条件にあった求人を効率よく探すために以下の方法を確認し自分に合った就職先を見つけてください。
進路の方向性を確認
自分が理学療法士としてやりたいことを明確にします。やりたいこと、方向性が決まっていないと面接でもあやふやな回答になり就職も決まりにくくなります。
医療、介護施設、福祉、スポーツ系、教育、トレーナー等、大まかでも良いのでその特徴を知り方向性を決めます。
学校に来ている求人を確認
各病院や施設から学校へ求人案内が届きます。自分が就職したい求人が決まったらまずは学校に来ている求人を確認しましょう。
学校に求人が来ているということはある程度求人を出しているほうもその学校を信頼しているということなので、就職は有利です。
アプリや求人サイトを確認
スマホのアプリやリハビリ職専門職の求人サイトを使うことで求人を知ることができます。
学校に来ている求人以外の求人状況を知っておくと、選択の幅が広がりより多くの選択肢の中から自分にあった就職先を見つけることができます。
ハローワークで確認する
一般的な仕事探しの方法としてハローワーク(公共職業安定所)を活用する方法があります。
ハローワークはそれぞれの拠点地域における求人を多く取り扱っています。ネットの求人サイトには載っていない地元求人も豊富にあるため、住んでいるエリア内で就職先を探したいという方にはオススメです。
ハローワークは募集が終了した場合は削除されて見えなくなるので、安定感がありました。なので私は、ハローワークで新しい求人情報が更新されてないかどうか頻繁にチェックして今の就職先を見つけることができました。
知人に紹介してもらう
養成校の先輩や知人の紹介では、実際に働いている人から仕事内容や待遇、職場の雰囲気といった内部事情を知ることができるため、就職したときのイメージがしやすく、就職後のミスマッチを減らせるといったメリットがあります。
一方で、先輩や知人に紹介してもらった手前、勤務先のイメージが自分が思っていたものと異なっていても断りにくいというデメリットもあります。
まとめ
- 理学療法士の仕事はリハビリ以外に記録・書類作成、研修会への参加なども行っている
- 理学療法士になるには国家試験に合格しないといけない
- 理学療法士は主に脚を担当し、作業療法士は主に手を担当している
- 理学療法士の主な就職先は病院、介護施設、養成校の教員、トレーナーなど
今回は理学療法士と作業療法士の違いや理学療法士のなり方、仕事内容について解説しました。
近年理学療法士の養成校はどんどん増え、以前に比べると就職や転職が行いにくい状況になりつつあります。しかし、理学療法士の知識や技術は医療現場や介護施設からのニーズは高く、高齢化社会のこれかの日本には一定の需要は必ずあります。
この記事を見て、これから理学療法士を目指そうという人が増えてくれると幸いです。