入職するにあたって、避けては通れないモノと言えば、「履歴書を書くこと」ですね。採用試験で必ず提出し、人事部や各スタッフに閲覧され、合否決定の要因となります。
私の病院では、提出された履歴書はスタッフであれば誰でも閲覧可能となっており、不合格の人の履歴書をいくつも見てきました。落ちる人、受かる人の特徴がハッキリと分かります。
前の職場では人事の経験がありましたので、その経験も合わせて、「受かる履歴書の書き方」を説明していきます。
意外に出来ていない理学療法士に必要な「文字の書き方」
落ちる人の一番の特徴は、「文字を真面目に書かない」。これに尽きます。上手い下手ではなく、真面目に書かないのです。
それは受け手にも伝わります。文字を見るだけで、「この人は不真面目なんじゃないか?」、そう思われてしまいます。そんな人をあえて採用する病院・施設はありません。不真面目な人は医療施設にとって危険人物とみなされます。
医療従事者はすべて、患者様の命や個人情報を守る重責を担っています。それらを侵す事故があった場合、数千万円の損害賠償と病院が傾くほどの風評被害のリスクがあるため、事故を起こすことを極端に恐れます。
ゆえに、事故を起こす確率を下げる人材を医療施設は求めるのです。それこそが「真面目な人」なのです。彼らはいつも緊張感を持って、キッチリと仕事をしてくれるからですね。
履歴書では、真面目な人と思われるような文字の書き方を心がけましょう。
では、「真面目な人に見える文字の書き方」と「不真面目な人に見える文字の書き方」の違いはどこにあるのでしょうか?以下で述べます。
〇楷書 ×行書
「楷書」というのは、一画一画ペンを離して書くことです。「行書」のように続けて書くよりも、とても時間がかかります。
裏を返せば行書は時間を短縮して書いていることになります。「履歴書を書くのがめんどくさい、書いてる時間がもったいない」といった、書き手の邪念が透けて見えてしまいます。
行書で書いている履歴書を何枚も見てきましたが、はっきり言うと印象はとても悪いです。こんな人が入職してきて大丈夫かと心配になりますね。そしてほとんどの場合、受かりません。
一方で、楷書は一画一画、誠意と時間をかけて、貴院のスタッフが読みやすいように書きましたよ、という意思が感じられます。
とにかく、楷書でキチっと書いておけば、それだけで採用に近づくことができるでしょう。
〇書き直し ×修正テープ
履歴書を書いていて、誤字・脱字があった場合、速やかに破棄して新しい用紙を準備しましょう。修正液・修正テープの使用は不可です。医療現場での公的文書においても、修正テープは使用不可です。履歴書においても同様でしょう。
間違った箇所をペンでグチャグチャにしたままの履歴書を持ってきた人がいましたが、受かる訳がありませんよね。不真面目・非常識というレッテルを自分で貼っているようなものです。
〇下書き ×いきなり清書
履歴書はまず鉛筆かシャープペンシルで下書きをしましょう。各欄への収まり具合が把握できます。パッと見て読みやすい履歴書を作るためには、いきなり清書をしても失敗するだけでしょう。(※見やすい履歴書の作り方は後述します)
そして、下書きの文字は消しゴムでキレイに消しましょう。消し残しなく、そして紙を傷めないように注意して消してください。紙を傷めたらまた書き直しです。
最終チェック
1枚の履歴書を書き終わるまで何時間も要することがあります。しかし、そこで安心してはいけません。誤字・脱字、不適切な表現、間違った用法、伝わりづらい曖昧な文章等が無いか、入念にチェックしてください。
理学療法士の履歴書写真で気をつけること
履歴書には自分自身の写真を貼付しなければなりません。容姿の美醜で合否が決まる訳ではありませんが、写真の撮り方には工夫が必要です。
理学療法士は患者様やご家族の方々と接する機会が多く、接客業のような一面があります。誰からも話しかけやすい雰囲気や、清潔感を写真で演出できれば合格率が上がるでしょう。
スーツの着こなし方
当然ながら私服はNGです。スーツを着用しましょう。
男性
- ネクタイ……レジメンタル、ドット等で爽やかなモノを選ぶ。
- ワイシャツ……白が基本。薄めの色でも可。ボタンダウンが望ましい。
- スーツ……グレーよりも濃紺のほうが引き締まる。黒は喪服をイメージする人事もいるため、避けるのが無難。肩幅に合ったモノと3つボタンを選ぶ。
女性
- ブラウス……白が基本。薄めの色でも可。襟が大きいモノや派手なモノは避ける。
- スーツ……グレー、濃紺から選ぶ。黒は喪服をイメージする人事もいるため、避けるのが無難。3つボタンが基本。
- アクセサリー……医療従事者はピアスや指輪などの装着禁止の場合が多いため、アクセサリーはつけない方が無難。
表情
爽やかな表情を心がけましょう。
- 息を止めずに、息をゆっくりと吐きながら
- 目は正面を見つめる
- 少し微笑むように
- 胸を張り、アゴを上げない
プロに撮ってもらう
スピード写真は絶対にやめておきましょう。必ず、写真スタジオでカメラマンに撮ってもらいます。
- ネクタイの不自然さ
- 姿勢のズレ
- 服についたほこりやシワ
- 表情の硬さ
など、カメラマンは私たちが気づかないことを指摘してくれるので、その通りに修正しましょう。スピード写真とは別人のような写真が撮れるでしょう。
学歴・職歴欄の正しい書き方
履歴書には学歴・職歴を記入する欄があります。その書き方で、ひととなりをチェックされていますので注意しましょう。
和暦・西暦どちらかに統一する
和暦、西暦どちらを使用しても良いですが、混在してはいけません。その履歴書すべてで同じになるように統一しましょう。また、和暦の場合は、昭和をS、平成をH、令和をRなどと略さないように注意します。
省略しない
学校名、企業名はすべて正式な名称をその通りに書きましょう。高等学校を「高校」、株式会社を(株)などと記入するのはNGです。また、「同上」を使うのも控えましょう。
学歴・経歴詐称に注意
私はフリーターの時期がありましたので、経歴を偽りたい気持ちも分からなくはありません。しかし、ウソをつくのは良くない事です。
入職しても、詐称が明るみに出ないかと怯えながら仕事をするのは苦しいものです。そしていずれウソはバレるモノです。
正直に、その期間は空白にしておきましょう(アルバイト歴は職歴に入りません)。
理学療法士の免許・資格欄は何を書いたらいい?
履歴書には免許・資格を記入する欄があります。何でも書いて良い訳ではありません。理学療法士にとって有利になるようなものを書ければ良いでしょう。
理学療法士免許(取得見込みでも必ず書く)
意外に忘れがちですが、理学療法士免許は書いておきましょう。取得見込みの方は「取得見込み」「取得予定」と記入します。国家試験をまだ受けていない場合は記入不要です。
資格免許(2級以上が好ましい)
基本的には1級、もしくは2級の資格を記入します。3級以下になると書く意味がありません。
また、学歴・職歴欄と資格欄の和暦・西暦は統一しておきましょう。
もちろん、資格名称の省略はしてはいけません。英検=「実用英語技能検定」 普免=「普通自動車第一種運転免許」と書きましょう。運転免許はATであれば、(AT限定)と付け加えます。
勉強中のモノを記載
理学療法士として直接的に関係する資格取得に向けて勉強しているのであれば、それを記入するとアピールになります。
- 福祉住環境コーディネーター
- NSCA(National Strength & Conditioning Association)
- CSCS(Certified Strength & Conditioning Specialist)
- 健康運動指導士
等々、他にもたくさんの医療系の資格があります。「〇〇を勉強中」「〇〇を□月に受験予定」等と書いておきましょう。
理学療法士志望において、最も大事な「志望動機」
学歴・職歴・資格・免許は今すぐには変更・取得できませんが、志望動機は今すぐ変えられます。他の就活生よりも経歴に不利があっても、志望動機を上手く書くことにより、彼らを差し置いて採用されることも可能でしょう。
志望動機欄は、常識人である事と個性をアピールできる絶好のチャンスなのです。
他ではなく、なぜ「ここ」なのか?
まずはじめに、常識人である事をアピールするために、本音を書くのはやめましょう。多くの就活生の本音は
- 別にどこでも良いし、他にも受ける予定だし
- 家から近いから
- 給料が良いから
- 休みが多いから、残業が少ないから
というのが本音の場合が多いです。しかし、名前も知らない不特定多数の試験官に、書面で本音を打ち明けるのは常識的に考えると「あってはいけない」ことです。危ないヤツだと認識されます。本音と建て前をキチンと使い分けられる常識的な人材を医療施設は求めています。
それプラス、観察眼もあることをアピールしましょう。他の医療施設の、理念や活動、理事長の言葉などをよく調べます。それらと比較して、特徴的な点を見つけると、受験する医療施設の独自性や理想像が見えてくると思います。
その独自性に賛同するような思いやエピソードを具体的に記入できれば、それだけで志望動機として及第点でしょう。
熱意を伝えるテクニック
熱意が伝わると合格にグッと近づくでしょう。「建て前ではなく、本音でココで働きたい人なんだ」と人事に思わせることが大事です。
そのために必要な内容としては、“自分自身の変化”です。この医療施設のここが優れている、ここが独自性がある、というだけでは熱意は伝わりづらいです。さらに踏み込んで、ここで働くことで自分がどう変化して、自分自身がどんな理学療法士になりたいかを具体的に述べることが肝要です。
例えば、「休みが他の医療施設よりも多い」のであれば、その休みを利用して勉強会に多く参加したり、資格取得をして、どんな患者様にも対応できる万能の理学療法士として活躍したい、等と書きます。
あくまで自分自身の変化を書くのであって、「医療施設を変えてやる」といった内容は不要です。自身の変化に対する熱意であれば、採用者は共感して、応援してくれます。
能力・資質をアピール
理学療法士にとって必要な能力をアピールすることでも合格率は上がります。
- コミュニケーション能力に長けている
- ストレスに強い
- 体力がある
- 好奇心・探求心豊富
- 観察力に優れている
上記が理学療法士にとって有利な能力です。
- 部活やサークルでリーダーをしていたことや、生徒会長だったこと等、人をまとめあげてきた実績
- 挫折を乗り越えてきた体験
- 毎日のように部活で鍛え、自主練習も欠かさず行った体力と忍耐力
- アルバイト経験等で、他のスタッフの気づかないところまで目を配って評価された
等、自信の実績と経験エピソードを具体的に書いて、能力があることをアピールしましょう。
文字の太さ・大きさを工夫
履歴書の文字の太さ・大きさを意図的に変えている人は少ないと思います。個性をアピールするために実践すると効果的でしょう。
志望動機
「誰からも信頼される理学療法士になりたい」
- 貴院の地域貢献活動に共感しました。私もボランティア経験があり、貴院入職後も引き続き地域貢献のお手伝いをしたいです。
- 他院よりも多い休日と少ない残業を利用して、研修に数多く参加したいです。患者様に信頼される知識と技術を生涯を通じて学びます。
- 高校では30名のフットサルチームのキャプテンを務めており、県大会で優勝しました。そこで培ったコミュニケーション能力には自信があります。患者様・スタッフの皆様とも積極的に交流していきたいです。
以上より、貴院を第一志望として、地域の皆様・患者様・スタッフから信頼される理学療法士になれるように、入職後も全力で取り組みます。
上記例のように、見出しは太く大きい文字で分かりやすく書きます。続いて、箇条書きでアピールし、最後に第一志望であることと、入職後も仕事に全力で取り組むことをまとめて宣言しておきましょう。
まとめ
受かるための履歴書の書き方を説明しました。
- 楷書で丁寧に書く
- 修正テープは使わない、下書きをする、最終チェックを怠らない
- 写真はスタジオで撮ってもらい、爽やかな表情で
- 志望動機は常識人であることと、熱意を伝えて、レイアウトにも一工夫
等となっています。