「自分には何が足りないのか？」と悩む前に、「今あるものをどう使えばいいか？」と考えたことはあるでしょうか。
アドラー心理学は、人間を“与えられたものの持ち主”としてではなく、“それをどう活かすかを選ぶ主体”として捉えます。
この記事では、アドラーが提唱した「使用の心理学」と、それと対極にある「所有の心理学」を比較しながら、
“人生を前向きに動かすヒント”をお伝えします。
持っているものの「使い方」が人生を変える
私たちは日常の中で、自分の性格や能力、環境を「与えられた条件」として捉えがちです。
「生まれつき内向的だから人前では話せない」「失敗が多いから自信がない」——こうした思考は、“持っているもの＝運命”とみなす所有的な発想です。
しかし、アドラー心理学ではこの見方を真っ向から否定します。重要なのは「何を持っているか」ではなく、「それをどう使うか」。
例えば「感受性が強い」人は、場によっては「繊細で不安定」と思われるかもしれません。でも同じ性質は、芸術・対人支援・マーケティングなどの現場では「共感力が高く、センスがある」と高く評価されます。
気質や性格は絶対的な善悪ではなく、「活かし方によって意味が変わる可変的なツール」として考えるべきなのです。
このように、“気質＝使い方次第”という視点を持つだけで、自己理解と自己受容の質は一段と深まります。
「所有の心理学」と「使用の心理学」の本質的な違い
「所有の心理学」とは、いわば“人間を構成する要素の寄せ集め”として捉える考え方です。
トラウマ、性格傾向、遺伝、過去の経験などが「心の中にある物」として存在し、それが行動の原因になると見る立場です。
一見すると科学的に見えますが、この考え方は「人間は条件づけられた存在であり、変化しにくい」とする側面を強く持ちます。
すると、「私は〇〇な人間だから無理」「それはトラウマのせいだ」と、自己責任を放棄する方向に進みがちです。
一方で「使用の心理学」は、全く逆の見方をします。
同じ性格や背景であっても、「今、自分はそれをどう使っているのか？」「どこに向かって使っているのか？」を問います。
人間を“使用する主体”として捉え、行動の目的と未来志向に焦点を当てるのです。
アドラーは、「感情は、行動しない理由にはならない」と述べています。
これは、「どんな感情を抱いていようと、行動の選択は自分に委ねられている」という力強いメッセージです。
つまり、私たちには「行動の舵」を握る力が常にあるということなのです。
性格を“変える”のではなく、“使い方を変える”
多くの人が「自分の性格を変えたい」と願います。でも、それは本当に必要なのでしょうか？
アドラー心理学の視点に立てば、「性格は変えなくてもいい、使い方を変えればいい」と考えるようになります。
たとえば、注意力散漫で落ち着きがないと悩む人がいたとします。
それを「だめな性格」と否定するのではなく、「多くのことに興味を持ち、フットワークが軽い」と捉え直したらどうでしょう？
その特性は、スタートアップ企業やクリエイティブな職種では大いに力を発揮する“強み”になり得ます。
つまり、性格を「固定された欠点」ではなく、「柔軟に活かせるツール」と見なすことで、自分への見方が劇的に変わります。
性格を変えるのは難しい。でも使い方は、今この瞬間から変えることができるのです。
まとめ
アドラー心理学が伝えるのは、「人は過去ではなく、未来によって動かされる存在だ」ということです。
与えられた資質に縛られるのではなく、「どう使うか」によって人生の意味を作っていく。
それは、誰にでも可能な変化であり、希望を持って未来を描くための第一歩でもあります。
今あるものを、どう使っていくか？
その問いに真摯に向き合うことが、自分らしく、そして幸せに生きる原動力になるのです。
※本記事で使用されている画像は、すべてミッドジャーニー（Midjourney）で生成されたイメージです。
