ブレイキングダウン6のメインカード「飯田将成 vs 啓之輔」戦で炸裂した啓之輔選手の膝蹴り。
あの膝蹴りのことを「テンカオ」と呼ぶ人もいます。
朝倉未来選手も「テンカオ」の名手といわれていますが、そもそも「テンカオ」とは何なのでしょうか?
また、飯田将成選手を沈ませた啓之輔選手の「テンカオ」はローブローだったのか?についても解説していきます。
テンカオの意味・語源
タイ語で「แทงเข่า」と書いて「テンカオ」と発音します。
「テンカオ」とはタイの言葉だったのでした。
「テン」とは「突く、突き刺す」の意味。「カオ」は「膝」という意味です。
つまり、「テンカオ」=「膝突き」ということになります。
「膝で突き刺す」というおそろしい技です。
タイ語だけあって、元々はムエタイで使われることが多い技でした。
ムエタイの奥義とも言われており、まともに入ると絶大なダメージを与えることになります。
日本で「テンカオ」が知られるようになったのは、K-1のテレビ中継からでしょう。
そこで実況アナウンサーが「テンカオ」という言葉を発信し、日本でも「テンカオ」が浸透していったようです。
テンカオのやり方
「テンカオ」の条件として、膝蹴りを出す際に「組みついていない状態」である必要があります。
首相撲をしていたり、組んでいる状態で出す膝蹴りは「テンカオ」ではなく、ティーカオ「ตีเข่า」と呼んで区別されています。
テンカオの距離
「テンカオ」は前蹴りやローキックなどに比べてリスクの高い技です。
前蹴りやローキックの距離では「テンカオ」は届きません。
ジャブが当たる距離が「テンカオ」が当たる距離とされています。
つまり「テンカオ」に合わせて相手のパンチが顔面に飛んでくる可能性が十分にあります。
「テンカオ」を必中させたいのであれば、ジャブで距離を確認して、相手の大ぶりなパンチにカウンターを合わせるように「テンカオ」を決めると良いでしょう。
テンカオの基本
「テンカオ」にも様々な種類があり、人によって打ち方が変わります。
- 上げた膝を折りたたむ派と、折り畳まない派があったり
- 手で顔をガードしながら膝を出す派と、腕を振って(クロスクランチして)膝を出す派があったり
- 膝を出す際に上半身が後方に少し傾く派と、軸足から上半身までがまっすぐ派があったり
等々。
ですので、テンカオの基本は何かというと難しいのですが、共通点もあります。
- 顎を引く
- 軸足は踵をつけないが、軸足を回転させない(足首を返さない)
- 腰を回して膝はやや内側に入る
等は大体共通していると思います。
テンカオはどこを攻撃するのか?
テンカオで攻撃する部位は、みぞおちです。
みぞおちは人体の急所のひとつであり、様々な神経や横隔膜があるために、そこを攻撃されると強烈な痛みや呼吸困難を生じます。
みぞおちを狙うのが難しければ、脇腹を攻撃します。特に右脇腹にはレバー(肝臓)があり、そこも人間の急所のひとつとなっています。
ですので、「テンカオ」は左膝を使って、相手の右脇腹〜みぞおちを狙うのが有効と言えるでしょう。
朝倉未来選手のテンカオ
RIZINで活躍している朝倉未来選手の「テンカオ」について解説したいと思います。
朝倉未来選手は、キックボクサーやムエタイの選手ではありませんが、MMAルールで「テンカオ」を良く決めています。MMAルールというのは、よりストリートファイト的な要素があり、実戦的であるとも言えます。
朝倉未来選手の「テンカオ」は膝を曲げて相手のみぞおちに突き刺すように打っています。
朝倉未来選手の「テンカオ」は上体が少し後ろに仰け反っています。その分、骨盤が前に移動して推進力が発揮されています。
また、朝倉未来選手の「テンカオ」の予備動作はほとんど無く、ノーモーションです。
実はテンカオを打つ際には両手を上げて体幹を伸ばした反動を使って、体幹の筋肉を縮めながら膝を出すと威力が上がります。
しかし、朝倉未来選手は両上肢の予備動作なく「テンカオ」を放ちます。MMAルールにおいては、相手が何を仕掛けてくるか予想がつきづらいため、一瞬の予備動作が大きな隙となる場合があります。キャッチされてテイクダウンをされると大きなハンデとなったりします。
最大威力よりも攻防一体の素早い「テンカオ」というのが実戦では有効なのかもしれません。
飯田将成を襲ったテンカオはローブローだった?
ブレイキングダウン6で啓之輔選手が飯田将成選手を倒した「テンカオ」ですが、上の画像からはローブロー(金的)のように見えなくもないです。
あまりの衝撃に飯田将成選手はしばらく身動きできませんでした。
啓之輔選手の「テンカオ」はローブローだったのかどうかについて、バン仲村氏の動画で判明しています。
上の動画にて、バン仲村氏は啓之輔選手の膝が「みぞおち」に入っていたと話しています。
「みぞおち」に入った証拠として、飯田将成選手本人からバン仲村氏が聴き取りを行ったようです。
試合直後に、飯田将成選手とバン仲村氏は同じエレベーターに乗って一緒に控室に戻っていきました。その際におそらく飯田将成選手から「みぞおち」に入ったということを聞かされたのだと思います。
この角度からの画像だと、たしかにローブローでは無さそうですね。
見事な技術で飯田将成選手に逆転勝利した啓之輔選手でした。
ということで、テンカオについてのあれこれを解説しました。
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