呂布奉先、ローマを治める <第一章 北狄の王>

ヲヲクラゲ
漫画原作者のヲヲクラゲです。三国志最強と謳われる呂布りょふが主人公の小説です。
今回からは、第1章 北狄ほくてき の王 が始まります。もしよろしければ、からご覧ください。

第一話

小高い山をいくつ越えたか呂布りょふは覚えていなかった。

赤茶けた起伏のある稜線が周りに広がり、落陽に映された三つの騎影が右側の斜面を共に走っている。

 

村を出て四日目、呂布、ラクレス、可比能かひのうの一行は順調に鮮卑せんぴへの距離を縮めていた。

村からの出発のおり、父は何も言わず悲しい目をした。以前呂布に言った悲しい言葉と同じ色をした目だった。

 

「待っています」

と送り出してくれた季蝉きせん

「お気をつけて」

と道中の無事を祈ってくれた村の皆。

 

今まで自分は見えないが、温かい袋の中で生きていたのだと呂布は思った。

 

はく様、日も暮れてまいりました」

ラクレスが馬上で声を掛ける。西陽に照らされた髪は燃えているように紅い。

 

「みんな、今日はここまでだ」

 

そう言うと呂布は馬の速度を緩め、周囲から目立たない位置で馬を降りた。

後の二人もそれにならい、夜営の準備がはじまる。

軽い食事を済ませると三人は火の周りで胡座あぐらをかいた。

 

「静かだな」

 

可比能かひのうが誰に言うでもなく呟いた。かすれた声が大地の色と良く合っている。

応えはなかった。残りの二人も同じことを感じていた。

すでに匈奴きょうど領内であり、そろそろ見張りの兵士に会っても良さそうなものだ。

第ニ話

「ラクレス。匈奴きょうど鮮卑せんぴに圧迫され、この地に押し込まれたと聞く。もはや領地を巡察する力も無いのだろうか」

 

呂布の問いにラクレスは少し考えて答えた。

 

「……確かに匈奴きょうどに昔の勢いはございません。しかしそれでも国境を維持する力までも失くしているとは考えられません。中央にはいまだ十万に足る兵士を集める力があるはずです」

 

「そういえばかんとの国境に無人の見張り台があったな」

可比能かひのうが口を挟んだ。

 

匈奴きょうどは今、形だけとはいえかんに服属している。かん側の国境に少数の兵を充て、鮮卑せんぴ側の守りを厚くしているのは間違いないだろう。

だからといってこれはあまりにもひどい状態だ。

 

「やはり匈奴きょうど領内で何か起こっているようだな。皆気付いているか?昼過ぎから風に異臭が混ざりはじめていた」

 

呂布の言葉を聞いたラクレスが無言で頷くのを見て、可比能かひのうは驚いて声を出した。

 

「おいおい!俺だけ仲間はずれかよ。はくにぃ教えてくれよ」

 

「未熟者が、漫然と生きておるからそうなるんじゃ」

 

「なんだと!鼻が利くのと生き方が関係なんかあるもんか!」

 

「まあまて」

 

笑いながら二人を制して呂布は可比能かひのうに言った。

第三話

「悪かったな、すぐ伝えるべきかと思ったが何の匂いか分かってからと思ってな」

 

「どんな匂いなんだ?」

 

「一つは血の匂い」

呂布の言葉にラクレスがまた頷く。

 

「もう一つは……魚、水、とにかくそういうものが腐ったような匂いだ。しかし……正確には分からん」

 

「恐らく国境の見張り兵がいなかったことにも関係あるのでしょうな」

ラクレスが意見を述べた。

 

「多分な…だが何が起こったかまでは今のところわからんな」

そう呂布は答えた。

 

「ふうん…ではこういうのはどうだはくにぃ。この先の川に誰かが毒を流した、それで匈奴きょうどの兵が血を吐いて倒れたんだ」

 

「ふむ…悪くない考えだが、わざわざ国境の見張り員が遠出して、毒を飲むのもおかしな気がするな…見張り台の近くにも川があったろう?」

 

呂布の言葉を聞いた可比能かひのう胡座あぐらを崩して仰向けになった。それほど興味がわかないようだ。

 

「近いうちに匂いの元は分かるのか?」

 

欠伸をかみころしながら可比能かひのうが聞いた。

 

「匂いは強くなってきている。このまま行けば明日には近くまで行けるはずだ」

 

「ううん」

 

呂布の答えに応じたのか、寝言なのか分からない言葉を発すると可比能かひのうは小さな寝息をたてはじめた。

 

すでに夜の帳が辺りを覆っている。

 

 

ヲヲクラゲ
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