【最新!著作権問題入門】画像生成AIと著作権侵害について徹底解説!「ミッドジャーニーで画像を生成しただけで違法なの?」

今回は画像生成AIと著作権についての記事になります。

ミッドジャーニー(Midjourney)をはじめとした画像生成AIを使用した際に、

  • 生成した画像に著作権は発生するのか?
  • 誰かに訴えられたりしないのか?

などの疑問が出てくると思います。

以下では主にミッドジャーニー(Midjourney)を使用した場合を例として、画像生成AIと著作権について解説していきます。

 

 

ミッドジャーニー(Midjourney)で画像を生成しただけで違法?

画像生成AIであるミッドジャーニー(Midjourney)では、簡単なプロンプトを書くだけで、とてもクオリティの高い画像が1分足らずで生成されます。

数年前では考えられなかった魔法のようなサービスですが、果たしてこれは許されるべきことなのでしょうか?

 

結論から言うと、ミッドジャーニー(Midjourney)で画像を生成するだけで、著作権を侵害する可能性があります。

著作権を侵害した場合には、著作権者から訴えられる場合(民事又は刑事)があるため注意が必要です。

 

ミッドジャーニー(Midjourney)で画像を生成するだけで、著作権を侵害するであろう要素がいくつかあります。

①生成した画像を公衆に向けて発信する場合(特にステルスモード以外での作成)。

②生成した画像が著作物と類似性(似ている)がある場合。

③類似性があった場合に、依拠性も認められる場合。

以上の3つの要素が全て満たされると、著作権侵害で訴えられる可能性が0ではなくなります。

 

3つの要素それぞれについて詳しく解説していきますが、まずは画像生成AIと著作権侵害について簡単にご紹介しておきます。

 

 

画像生成AIと著作権侵害について

ミッドジャーニー(Midjourney)をはじめとした画像生成AIで出力された画像は、どのような場合に著作権侵害になるのでしょうか?

AIを利用して画像等を生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの、 通常の場合と同様に判断されます。

引用元:令和5年度著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月 文化庁著作権課

文化庁著作権課の資料には以上のように記されています。

 

このことから、ミッドジャーニー(Midjourney)で生成した画像は、自身で実際に描いた絵と同じ観点で著作権侵害の有無を判断されます。

 

自分で描いた絵であれば、「ドラえもん」のイラストをそっくりに模写したとしても、私的使用する範囲であれば著作権侵害にはあたりません。

一方で、「ドラえもん」のイラストを模写した画像を、インターネットなどを利用して公衆に向けて発信したり、商用利用すると著作権侵害になります。

前述したように、人が描いたモノでも、AIが生成したモノでも著作権侵害の観点では同じ扱いを受けます。

そのため、ミッドジャーニー(Midjourney)で「ドラえもん」に類似した画像を生成して、それを私的使用の範囲を超えて一般公開すると、著作権侵害で訴えられる可能性がありますので注意が必要です(複製権・翻案権・公衆送信権の侵害)。

 

私的使用の範囲とは?

私的使用の範囲とは「個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」とされています。

家庭内の意味するものは、同一家計で同居している人間関係が想定されているが、「準ずる限られた範囲内」については、メンバー相互の間に強い個人的結合関係が必要とされる。職業上での使用目的であれば、メンバー相互の間に強い個人的結合関係があったとしても「家庭内その他これに準ずる」という概念には入らない。また、非職業的であっても密接な人間関係の範囲を超える利用は本条の適用外になる。したがって、例えば、学校の職員会議や教授会など、そのメンバーが限定されている間で使用するものであっても私的使用目的ではなく、町内会の行事での使用も私的使用目的ではないと一般的には解される。

引用元:詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)

上記の内容を要約すると、私的使用の範囲内に含まれるのは以下の者になります。

・自分自身
・同一家計で同居している者
・非職業的かつ、メンバー相互の強い個人的結合関係がある者

 

これらの限られた範囲内であれば、著作物を複製(コピーや模写など)や翻訳・編曲・変形・翻案してシェアを行っても、著作権(複製権)の侵害には当たらないとされています(権利制限規定。例外もあり)。

逆に言えば、私的使用の範囲以外に向けて著作物を複製等してシェアすると、著作権の侵害になります。

 

著作物とは?

そもそも著作物とは何でしょうか?

詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)」によれば、著作物の定義について以下のように説明しています。

保護対象となる著作物について、著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)と定義されている。

(中略)

著作権制度で保護対象となる著作物は、アイデアや思想等ではなく創作的表現物であるという点については、国際的にも共通的な理解と言える。

 

【表現物の保護】

著作物として保護されるためには「表現したもの」でなければならない。

文字や記号、線、面、色彩、音階などの表現手段によって客観的に具現化されている必要がある。その作品の内奥にある思想やアイデア、着想、あるいは当該作品を特徴づける小説家や画家の作風や画風、表現手法などは、それ自体としては著作権法の保護対象ではない。

以上のことから、著作物とは、思想・感情が創作的に表現されたもの、つまり「創作的表現物」である必要があります(創作的表現の意味については後に詳述します)。

著作物(創作的表現物)であれば、それは著作権法で保護されて、他者の利用(複製など)を排除する権利が著作者に与えられます。

 

「創作的表現物」に該当しなければはどうなる?

著作物は「創作的表現物」でなければなりません。

逆に言えば、「思想・感情が創作的に表現されていないもの」=「創作的表現物でないもの」=「著作物に該当しない」ということになります。

著作物に該当しないもの(創作的表現物でないもの)は、著作権法で保護されません。

著作権法で保護されないということは、それを作成した者が、それを独占的に利用できないということです(他者が本人の許諾なく自由に利用できてしまう)。

アイデアや画風、単なるデータなどは著作権で保護されない

「創作的表現物」とは具現化されている必要があり、アイデアなどのように具現化されていないものについては「創作的表現物」として認められません。

また、芸術家の作風や画風、表現手法も「創作的表現物」としては認められないため、著作権法で保護されません。

そして、単なる事実やデータについても「創作的表現物」としては認められないため、著作権法で保護されません。

 

 

著作者とは?

「著作者」とは何でしょうか?

 著作者とは,「著作物を創作する人」のことです(第2条第1項第2号)。

一般には,小説家や画家や作曲家などの「創作活動を職業とする人」だけが著作者になると考えられがちですが,創作活動を職業としていなくても,作文・レポートなどを書いたり,絵を描いたりすれば,それを創作した人が著作者になります。

つまり,小学生や幼稚園児などであっても,絵を描けばその絵の著作者となり,作文を書けばその作文の著作者となります。

うまいか下手かということや,芸術的な価値などといったことは,一切 関係ありません。 また,私たちが手紙を書けば,多くの場合,その手紙が著作物となります。

私たちは,日常生活を送る中で,多くの著作物を創作しています。

ただ,そうした著作物が出版されたり,放送されたりして経済的に意味のある形で利用されることがほとんどな いため,著作者であることや著作権を持っていることを意識することが少ないだけのことです。

なお,著作者とは「著作物を創作する人」のことであるため,著作物の創作を他人や 他社に委託(発注)した場合は,料金を支払ったかどうか等にかかわりなく,実際に著作物を創作した「受注者側」が著作者となります。

このため,発注者側が納品後にその著作物を利用(例:自社のコピー機による増刷など)するためには,そのための契約をあらかじめ交わしておくことが必要になりますので,注意を要します。

引用元:著作権テキスト 文化庁著作権課

以上のように、誰しもが「著作者」にすぐになることが出来ます。

幼稚園児が本人の感性で表現した絵であれば、その幼稚園児が著作者となり、その絵は著作権法で保護され、幼稚園児が独占的に利用することができます。

その絵が上手いか下手かは著作権の発生に無関係です。

また、著作物が創られた瞬間に、著作権が何の手続きや登録もなく自動的に付与されます(無方式主義)。

ちなみに日本での著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年となっています。

著作権の保護期間が終了した著作物は、パブリックドメインと呼ばれます。

 

以上が、画像生成AIと著作権まわりについての大まかな説明になります。

それではミッドジャーニー(Midjourney)を使用することで、著作権を侵害するであろう3つの要素について解説していきます。

 

①生成した画像を公衆に向けて発信する場合(ステルスモード以外で作成)

ミッドジャーニー(Midjourney)では、画像を生成すると、その画像は自動的にWebサイト(My Imagesなど)にアップロードされます。

このWebサイトにアップロードされた画像は、誰でも閲覧・ダウンロードすることが可能です。

つまり公衆の目に触れることになります。

ミッドジャーニー(Midjourney)の利用規約にも以下のように記されています。

Midjourney は、公開設定に投稿される画像やプロンプトを他の人が使用したりリミックスしたりできるオープンコミュニティです。デフォルトでは、画像は公開およびリミックス可能です。

 

もし「ドラえもん」そっくりな画像をミッドジャーニー(Midjourney)で生成した場合、公衆に向けて送信されるため、私的使用の範囲を超えることとなります。

これは著作権侵害のケースに該当する可能性があります(複製権・翻案権・公衆送信権の侵害)。

対策としては「ステルスモード」で画像を生成することが挙げられます。

ProプランもしくはMegaプランで「ステルスモード」が利用できます。

 

公衆とは?

法律分野での「公衆」の意味については以下のように説明されています。

 著作権法の「公衆」には、「不特定の者」のほか「特定かつ多数の者」も含まれます。(第2条第5項)

相手が「一人」であっても、「誰でも対象となる」ようなサービスを行えば、「不特定の者」に対するサービスとして、公衆向けと評価されます。

例えば、一人しか入れない電話ボックス程度の大きさの箱の中でビデオを上映している場合、「1回に入れるのは一人だが、順番を待って100円払えば誰でも入れる」というときは、「公衆向けに上映した」ことになります。

また、ファックス送信などの場合、1回の送信は「一人向け」だが、「申込みがあれば誰にでも送信する」というサービスを行うと「公衆向けに送信した」ことになります。

さらに、一つしかない複製物を「譲渡」「貸与」するような場合、「特定の一人」に対して、「あなたに見て(聞いて)欲しいのです」と言って渡す場合は「公衆」向けとはなりませんが、「誰か欲しい人はいませんか?」と言って希望した人に渡した場合には、「不特定の者」=「公衆」向けということになります。

「特定かつ多数の者」を「公衆」に含めているのは、「会員のみが対象なので、不特定の人向けではない」といった脱法行為を防ぐためです。

なお、何人以上が「多数」かについては、著作物の種類や利用態様によって異なり、一概に何人とはいえません。

一方、「特定少数の者」の例としては、「電話で話しているときに歌を歌う」とか「子どもたちが両親の前で劇をする」といった場合がこれに当たり、こうした場合には著作権は働きません。

引用元:著作権テキスト 文化庁著作権課

つまり、「公衆」とは「不特定の人(1人〜無制限)」または「特定多数の人」ということです。言い換えると「特定少数の人」以外は公衆ということになります。

また、「特定多数」の「多数」については、「DX時代における デジタル・コンテンツ著作権 単行本(ソフトカバー) – 2021/11/26 金井 重彦 (著), 高橋 淳 (著), 宮川 利彰 (著)」にて以下のように記載されています。

「多数」とはどの程度の人数を要するのかが問題となる。この点については、使われる著作物の種類、利用形態、利用形態のもつ経済的な意味を総合して、事案ごとに判断する必要があるが、おおよそ50人を超えれば「多数」といってよく(他の法律や、通達では50人程度を「多数」の目安としているものが多い。)、場合によっては20名ないし30名でも多数とされることもありうると理解しておけばよい。

このことより、「不特定の人(1人〜無制限)」および、20名〜50名以上の「特定の人」が「公衆」ということになります。

そのため、ミッドジャーニー(Midjourney)で画像生成を行い、世界中の誰もが閲覧できるサーバーにアップロードされた時点で「公衆」に向けて画像を送信したことになります。

 

ステルスモードは本当に安全か?

前述したように、「ステルスモード」を利用すれば、他人からの閲覧を制限できます。

ミッドジャーニー(Midjourney)の利用規約にも以下のように記されています。

Midjourney は、公開設定に投稿される画像やプロンプトを他の人が使用したりリミックスしたりできるオープン コミュニティです。デフォルトでは、画像は公開およびリミックス可能です。前述のとおり、お客様は Midjourney にこれを許可するライセンスを付与します。「プロ」または「メガ」プランを購入した場合、これらのパブリック共有のデフォルトの一部をバイパスできます。

「プロ」または「メガ」サブスクリプションの一部として、または以前に利用可能なアドオンを通じてステルス機能を購入した場合、当社は、ユーザーがステルス モードを使用している状況では、ユーザーが作成したアセットを公開しないように最善の努力を払うことに同意します。

 

しかし、「ステルスモード」で作成したとしても、サーバーに画像はアップロードされます。

そのサーバーを管理している運営関係者は、「ステルスモード」で作られた画像であっても、閲覧することが出来る可能性があります。

果たして運営関係者は「公衆」に該当するのでしょうか?

この件について弁護士に会って相談してみたところ、「運営関係者が公衆に該当する可能性はある」とのことでした。

もしも運営関係者が公衆に該当するのであれば、著作物に類似した画像を「ステルスモード」で作成すると、公衆送信権の侵害に該当する可能性があります。

また、「AIの法律 単行本 – 2020/11/20 福岡 真之介 (著)」によれば以下のように記載されています。

AI生成物をYouTubeにアップロードするような行為は、私的使用のための複製の範囲外であり、公衆送信権の侵害となり得る(同法231項)。また、私的使用のための複製の例外は、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製器を用いた複製については適用されない(著作3011号)。この点、AIソフトウェアが個人のPCではなくクラウドサーバで提供されている場合に、クラウドサーバがこの公衆用自動複製器に該当するかが問題となる。条文の文言を厳密に解釈するとクラウドサーバがこの公衆用自動複製器に該当する可能性があるとされている点に留意が必要である。

 

一方で、「詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)」では以下のように記載されています。

クラウドサービスにおいて、サーバーの利用契約者の個人領域に私的使用目的で著作物を蓄積した場合において、当該サーバーは公衆の用に供されている「自動複製機器」か否かが一つの論点となる。サーバーの当該領域は、当該利用者との契約期間中は、その者のみが著作物その他の情報の蓄積のために利用するものであり、昭和59年改正時に想定していた自動複製機器とは基本的に性質が異なる。また、真正商品の代替的な複製物の作成の防止が本来の趣旨であり、クラウドサービスにおけるスペースシフトのための複製は、当該趣旨と異なる。

また、「インターネットビジネスの著作権とルール(第2版) (エンタテインメントと著作権-初歩から実践まで-5) 単行本 – 2020/3/16 福井 健策 (著, 編集), 池村 聡 (著), 杉本 誠司 (著), 増田 雅史 (著), 赤松 健 (イラスト)」では以下のように記載されています。

クラウド上のサーバも、不特定多数のユーザが使える場合、文言上は「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」に該当しそうにも思えます。しかし、この要件を立法した際、クラウドサービスなど想定されていなかったことは明らかです。この点についてクラウド小委報告書は、サーバ上で行われる複製は「家庭内にあるハードディスクの延長線上にあるものと考えれば、家庭内での複製とある程度等価と捉えることができるため、高速ダビング機器の場合とは事情が異なる」との有識者の意見を紹介し、基本的には私的使用目的での複製に該当すると結論づけています。

以上のことから、個人で使用するために著作物をサーバーへアップロードするだけであれば、基本的には私的使用の範囲内で複製したものと判断されるようです(著作権侵害にあたらない)。

 

これらのことから考えると、「ステルスモード」で「ドラえもん」などの著作物に類似した画像を生成するだけであれば、著作権侵害で訴えられる可能性は低そうです(可能性が0ではありません)。

もちろん、「ステルスモード」で作成した画像であっても、販売・SNSにアップロード等行えば私的使用の範囲を超えるため著作権侵害の可能性が高まりますのでご注意ください。

 

 

②生成した画像が著作物と類似性がある場合

ミッドジャーニー(Midjourney)で画像を生成した場合に、他人の著作物と同一、もしくは似ている画像が出力された場合について解説します。

著作権というのは「支分権」という12種類もの個別の独占権が束になって構成されたものです。

これら「支分権」のどの権利についても、その侵害となるためには「類似性」があることが必要です。

そのため著作権侵害において類似性の有無はとても重要な要素となります。

 

「類似性」とは何か?

類似性とは「似ている」という意味ですが、判例によれば「表現上の本質的な特徴を直接感得」できるかどうかによって判断されます。

「直接感得」とは、「直接的に感じ取ること」を意味します。

「表現上の本質的な特徴」というのは、簡単にいうと「創作性が高い、具体的な表現」ということになります。

「創作性が高い、具体的な表現」のことを「創作的表現」と言います。

原告著作物と被告著作物の間で「創作的表現」における共通性があれば、類似性が認められるため、類似品を排除できる可能性があります。

逆に言えば、「創作的表現」に共通性がなければ、それらの間に類似性は認められず、被告著作物を排除することが出来ません。

ただし、この類似性の判断基準は必ずしも明確なものではないため、争点になることが多いです。

 

「創作性が高い」とはどういう意味か?

類似性の有無の判断材料のひとつである「創作性が高い」とはどういう意味でしょうか?

「創作性」とは、表現者の個性が何らかの形であらわれていることです。

ただし、ある表現を行おうとすれば誰がやっても同じようなものにならざるを得ない「ありふれた表現」は、個性があわられているとは言えず、創作性が否定されます。

よって、他人の小説を丸写しにしたものや、毎年の各都市の人口を記録しただけのもの等は、個性をあらわす余地がないため、「創作性」は否定されます。

また、象の絵を描く際に、鼻を長く描いたとしても、それだけではありふれた表現であるため、そのような場合にも「創作性」が否定されます。

「創作性」が否定されたものに関しては、それと似たものを他人が描いたとしても類似性は認められません。

そもそも「創作性」がなければ著作物として認められません。

よって、誰でも鼻の長い象を描くことができるということです。

 

一方で、「ドラえもん」や「バットマン」などの著作者の個性がなんらかの形であらわれているイラスト等は、「創作性が高い」と認められます。

「創作性が高い」部分を模倣した作品は、類似性が認められる可能性があります。

類似性が認められると、類似品を作成した者は、著作者から訴えられる可能性があります。

 

「具体的な表現」とはどういう意味か?

類似性の有無の判断材料のひとつである「具体的な表現」とはどういう意味でしょうか?

著作権法の原理原則に「アイディア/表現二分論」というものがあります。

〈ケース研究〉著作物の類似性判断: ビジュアルアート編 単行本 – 2021/7/15 上野 達弘 (著), 前田 哲男 (著)」によると以下のように記載されています。

著作物とは「思想又は感情を……表現したもの」と定義されており、著作権保護を受けるのは「表現」であって、「思想又は感情」(=アイディア)ではない(これを「アイディア/表現二分論」という)。したがって、類似性の判断において問題になるのは、あくまで「表現」の共通性であり、「アイディア」の共通性ではない…

以上のように、アイディアは著作物として認められず、具体的な「表現」のみが著作物として認められます。

これは、思想・概念や事実発見などを含む「アイディア」は保護の対象外とした上で、そのアイディアを何らかの形で創作的に「表現」した作品を著作権法で保護するというものです。

例えば、「ファンタジー世界で勇者が魔王を倒すゲーム」というアイディアを思いついたとします。

もしそれが著作権で保護されてしまえば、「ドラゴンクエスト」などその他多くのRPGを他者が作れなくなります。

アイディアのような抽象的なものを著作物として認めると、他者の多様な表現活動が著しく制限されてしまい、文化の発展が阻害されます。

そのため、アイディアではなく、具体的な「表現」が著作物として認められるのには必要となります。

その具体的な「表現」を模倣すると、類似性が認められるため、類似品は排除される可能性があります。

つまり、「ドラゴンクエスト」と全く同じようなゲームを作ると、著作権者から訴えられる場合があります。

ただし、アイディアと表現の境界線は曖昧な部分もあり、争点になることが多いです。

 

画像生成AIと類似性について

以上のことから、著作物(創作的表現物)に似ている作品には「類似性」が認められる可能性があることがわかりました。

「類似性」が認められると、著作権者から訴えられる場合があります。

これらを踏まえて、ミッドジャーニー(Midjourney)で「ドラえもん」に類似した絵を生成した場合について解説します。

「ドラえもん」は、作者の個性が感じ取れるような「創作性が高い」デザインであり、イラストなどで表現された「具体的な表現物」であるため「著作物」として認められます。

「ドラえもん」には特徴的な目や口、手足の形や尻尾、鈴、ポケット、色など、創作性の高い部分がいくつもあります。

それらの創作性が高い部分に似た画像を、ミッドジャーニー(Midjourney)で生成すると、類似性が認められる可能性が高くなります。

また、ミッドジャーニー(Midjourney)はアイディアではなく、「画像」という具体的な表現で出力するため、類似性の要件にも合致します。

よって、ミッドジャーニー(Midjourney)で「ドラえもん」に似た画像を生成するのは、著作権侵害の可能性があることが分かります。

そのため、偶然「ドラえもん」などの著作物と類似した画像が生成された場合には、速やかに「❌」を押して画像を削除しておくと安全だと思います(ギャラリーからも削除されるため)。

※前述したように、ステルスモードを使用して、私的使用の範囲内で「ドラえもん」を生成するのは著作権侵害を免れる場合があると思います。

 

 

 

③類似性があった場合に、依拠性も認められる場合

ミッドジャーニー(Midjourney)が著作権侵害で訴えられる要件の3つ目である、「依拠性」について解説していきます。

まずはじめに、元の作品との「類似性」が無いと判断された作品については、「依拠性」の有無について確認する必要はありません。

「類似性」が否定された時点で、著作権侵害の可能性はなくなるからです。

一方で「類似性」が認められて、さらに「依拠性」も認められると、著作権侵害の可能性が高くなってしまいます。

 

「依拠性」とはなにか?

「依拠性」とは、他人の著作物に接し、それを自己の作品の中に用いることを言います。

簡単に言うと、他人の作品を見て模倣した場合、「依拠性」が認められるということです。

他人の作品との「類似性」があり、さらに「依拠性」も認められると、著作権の侵害になる可能性が高まります。

 

一方で、他人と同じ作品が出来たとしても、その作品を参考にしていなければ、「依拠性」は否定されます。

このように、偶然に類似した作品ができた場合は、「類似性」が認められても「依拠性」が認められませんので、著作権の侵害になりません。

 

「依拠性」の判断について

「依拠性」について「詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)」に以下のように記載されています。

著作物の利用に対して、排他的権利が及ぶか否かは、当該著作物の創作的な表現物に依拠した利用か否かという観点から判断される。著作物の全体的な利用だけではなく、その一部分であっても創作的な表現物が存在する限り、当該部分に依拠した利用に対して著作権法上の権利が及び得る。この依拠性は、原告著作物への被告によるアクセス可能性や、原告著作物に依拠しない限りは、当該被告の著作物は作成し得ないと思われる程度には原告著作物と類似・酷似し、同一性や共通性が認められる場合に推認される。

上記の内容から、原告著作物に被告がアクセス(接近)する機会の有無が「依拠性」の判断材料として用いられます。

また、偶然の一致では片付けられないほどの不自然かつ不合理な類似性があれば、「依拠性」が推認される場合もあります。

これらを踏まえて、「ドラえもん」に類似した絵を描いた場合について解説します。

例えば、「ドラえもん」の漫画が本人の部屋にあった場合、アクセス可能性は非常に高いと判断されます。

また、「ドラえもん」の特徴がことごとく一致した絵を描いていた場合、偶然に一致する確率はかなり低いため、これらのことから「依拠性」が認められる可能性が高くなります。

※当然ですが、その絵が「ドラえもん」の発表日(1969年)よりも早く完成していたのであれば、「依拠性」は否定されます。

 

ミッドジャーニー自体の「依拠性」について

ミッドジャーニー(Midjourney)を使用するにあたって、「依拠性」は生じるのでしょうか?

ミッドジャーニー(Midjourney)は「LAION-5B」を用いて構築されていると言われています。

「LAION-5B」というのは、インターネット上で利用可能な情報を、巡回ロボットを利用して収集・生成された大規模データセットのことです。

しかし、そのデータの大半は著作権で保護されており、ミッドジャーニー(Midjourney)側は著作者の同意を得ずに使用しています。

これら無許諾のデータを元に分析して、「ドラえもん」そっくりな画像が出力されたとします。

これは、ミッドジャーニー(Midjourney)のトレーニングデータに「ドラえもん」のイラストデータがあり、それを元に画像が出力された可能性が考えられます。

この場合であっても、「依拠性」が認められるかどうかは現状としては判然としません。

トレーニングデータセットに元になった著作物が含まれているだけで、依拠性を認めることに疑問を呈する見解がいくつかあるからです。

AIの法律 単行本 – 2020/11/20 福岡 真之介 (著)」によれば以下のように記載されています。

例えば数十万枚の画像データに数枚程度含まれていただけでは、依拠したとまでいえるかは疑問の余地があろう。著作物がパラメータとして抽象化・断片化されている場合にはアイディアを利用しているにすぎず依拠性を認めるべきではないという見解(アイディア説)もある。
他方で、著作物が学習済みモデル内に創作的な表現の形でデータとしてそのまま保持されている場合には依拠性を認めるべきであるという見解(依拠性肯定説)や、元の著作物が学習用データセットに含まれていることなどによりアクセスがあれば依拠性を認めてもよく、侵害の成否は類似性で判断すればよいという見解(類似性判断説)もある。
さらに、元の著作物はパラメータに抽象化、断片化されて記録されているが、元の著作物が一群のパラメータの生成に寄与し、かつ、その一群のパラメータに基づいて生成物が製作されている場合には、表現形式が変換されているとはいえ、元の著作物を利用してAI生成物が製作されているから依拠を肯定すべであり、他方、元の著作物が学習に利用されていたとしても、一群のパラメータの形成に寄与していない場合には、元の著作物がAI生成物の製作に現に利用されたとはいえないから、依拠を否定すべきであるとする見解もある(パラメータ生成寄与説)。
(中略)
このようにAIに取りかこまれた学習用データセットの依拠性についての見解は分かれている。

以上のように、トレーニングデータセットの「依拠性」についてはまだ明確な答えが出ていません。

ということで、ミッドジャーニー(Midjourney)で著作物に類似した画像生成に対する「依拠性」については、グレーであると言えます。

 

著作物のプロンプトを入れるのは危険

ミッドジャーニー(Midjourney)自体の「依拠性」についてはグレーであることをお伝えしましたが、プロンプトの入力内容には注意する必要があります。

プロンプトに「ドラえもん」などの著作物のタイトルを入力した場合は、「依拠性」を認められる可能性が高まります。

生成AIの著作権の4つの論点~著作権で把握しておくべきリスクと対応とは!?」において、福岡真之介弁護士は以下のように語っています。

「(著作物)をプロンプトに入れたら依拠性があるのは明らかです。」
「プロンプトの中に入れたら、依拠性があるので、それは気をつけましょう。」

以上のように、テクノロジー法務に詳しい福岡真之介弁護士がプロンプトに著作物のタイトルを入れるのは、依拠性が認められて危険なため注意喚起をされています。

また、小説の一部の文章など、著作物の文言をプロンプトとして使用するのも著作権侵害の可能性が生じます。

 

フェアユースについて

前述したように、ミッドジャーニー(Midjourney)は大量の著作権で保護されたデータを使用してトレーニングしています。

日本では「著作権法30条の4」において、機械学習について言及されています(後述します)。

一方で、アメリカでは「フェアユース」という法理があります。

「フェアユース」について「詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)」では以下のように記載されています。

(1)フェアユース法理の概要
米国著作権法では、個別の制限規定に加えて、107条でフェアユース法理が明文化されており、批評、論評、時事報道、教育、研究等のための複製その他の著作物の公正な利用(fair use)は、著作権の侵害とはならない旨が規定されている。また、具体的な事案において、当該著作物の利用が公正な利用か否かを判断する上で、次のような要件が考慮されるべき旨が規定されている。
①当該利用行為の目的及び性質
営利性があるか否か、非営利的な教育目的のものであるか否かということも含まれる。
②当該著作物の特性
③当該著作物全体との関連における利用部分の分量及び実質性
④当該著作物の潜在的な市場又は価値への影響

以上のように、たとえ著作物であっても、公正な利用のためであれば無断で使用しても良いとされています。

アメリカのGoogleは、書籍3000万冊以上を著作者の許諾を得ずにスキャンして、検索機能に一部抜粋表示を行っています。

このことで裁判になりましたが、「フェアユース」であることが認められたため、著作権の侵害にはなりませんでした。

ミッドジャーニー(Midjourney)もアメリカの会社であり、「フェアユース」の法理によってトレーニングデータを使用していると思われます。

ただし、上記④「当該著作物の潜在的な市場又は価値への影響」という要件があり、この部分をアメリカの判例では重視するようです。

この点について言えば、ミッドジャーニー(Midjourney)が大量に著作物に類似した画像を生成するなどした場合、トレーニングデータに使われた著作物の市場価値を下げてしまうという実害を被る可能性があります。

その場合には、著作権の侵害になる可能性があります。

 

日本の著作権法30条の4について

日本の「著作権法30条の4」の条文は以下のようになっています。

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)

第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

引用元:著作権法 e-Gov法令検索

以上のように、日本の法律では、AIの機械学習を目的にした著作物の利用は「著作権法第30条の42号」で基本的に認められています。

ただし、「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」という一文があります。

「享受」とは、「視聴者等の知的、精神的要求を満たすという効用を得ること」という意味です。

簡単にいうと、作品を見て学んだり楽しんだりすることです。

 

「著作権法30条の4」について、「AIの法律 単行本 – 2020/11/20 福岡 真之介 (著)」によれば以下のように記載されています。

AIが既存の画像や音楽の特徴量を分析するためであれば、著作権法30条の4に、その必要と認められる限度において利用することが認められている。AIが特徴量などを分析するために、既存の画像や音楽をメモリーやハードディスクに保存したり、改変を加えることは著作権侵害とはならない。
もっとも、AIによる情報処理の結果として、著作物を一般公衆に視聴させるなど外部提供する場合には、通常、視聴者等の知的、精神的要求を満たすという効用を得ることに向けられるものと評価できるため、著作権法30条の4の適用は受けず、別途同法47条の5などの他の権利制限規定の適用などを受けない限り、著作権者の許諾が必要となると考えられる。
そうだとすると、例えば、サザエさん風の画像を一般公衆に視聴させるために、サザエさんの大量のデータをAIに読み込ませて学習することは、著作権法30条の4の適用はなく、サザエさんの画像データの利用は、サザエさんの著作権者の許諾が必要ということになる。

また、「著作権法30条の4」について「著作権テキスト 文化庁著作権課」には以下のように記載されています。

例えば、3DCG映像作成のため風景写真から必要な情報を抽出する場合であって、元の風景写真の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような映像の作成を目的として行う場合は、元の風景写真を享受することも目的に含まれていると考えられることから、このような情報抽出のために著作物を利用する行為は、本条の対象とならないと考えられる。

以上のことからも、AIが特徴量などを分析・保存・改変するだけであれば著作権侵害とならないことが分かります。

ただし、トレーニングデータの「表現上の本質的な特徴(=創作的表現)」を感じ取れるような作品をつくるために、著作物から無断で情報抽出を行うことは出来ません。

どの程度までトレーニングデータとの類似性が許容されるのかは不明ですが、風景写真から3DCG作品という表現方法の大幅な変更があっても、創作的表現が似ていれば違法になるようです。

このことから、日本で画像生成AIのトレーニングデータを無断で学習させるためには、トレーニングデータ内の「創作的表現」が出力されないように、厳格に配慮する必要があると思われます。

 

一方で、「生成AI」は著作権を侵害するか?AI生成物に著作権は発生するか?コンピューターエンターテインメント領域における生成AIの利用と法律【CEDEC2023】という記事にて、STORIA法律事務所のパートナー弁護士 柿沼太一氏は「著作権法第30条の4」について以下のように述べています。

どのようなものが「表現上の本質的な特徴」を感じ取れる著作物にあたるのでしょうか。柿沼氏はLoRAなどの技術を利用した「作風が似ている」というレベルでは享受目的の併存には該当しないと考えられると言います。該当するのはAIが生成するものが元の著作物そのものであるようなものの場合だそうです。

以上の発言内容からすると、元の著作物とほぼ完全に一致するような類似があれば、違法になるとしています。

この場合ですと、多少似ている程度であれば合法ということになり、日本での画像生成AI開発は比較的行いやすいのかもしれません。

 

また、「著作権法第30条の4」にて、「著作権者の利益を不当に害してはいけない」という但し書きが付いています。

これは、情報解析用に販売されているデータベース等を無断で使用する行為等です。

 

 

 

結局ミッドジャーニーで画像を生成しただけ違法になるの?(小まとめ)

以上、ミッドジャーニー(Midjourney)で画像生成した際に著作権侵害になる要件を3つ解説してきました。

生成した画像が、「公衆の目に触れること(サーバーにアップロード等)」「著作物と似ていること(類似性)」「その著作物をマネしていること(依拠性)」の3要件が揃うと、著作権侵害の可能性が高まります。

ミッドジャーニー(Midjourney)を私的に利用する範囲であれば、「ステルスモード」にしておけば著作権侵害を回避することができると思います(著作権侵害の可能性が0ではない)。

もちろん、「ステルスモード」で作成した画像であっても、販売・SNSにアップロード等行えば私的使用の範囲を超えるため著作権侵害の可能性が高まりますのでご注意ください。

以下は「ステルスモード」以外の場合の対策です。

・偶然に著作物と類似した画像が生成された場合は「❌」を押して速やかに削除しておきましょう。

・著作物のタイトルをプロンプトに入れるのは依拠性が認められる可能性があり、危険です。著作物関連の言葉を入力するのは控えましょう。

 

 

 

著作権を侵害してしまったらどうなる?

著作権とは、著作者が著作物を独占的・排他的に利用できる権利です。

そのため、他人が無断で複製したり、改変することは原則として許されません。

しかし、もし著作物を無断で複製して、私的使用の範囲を超えて利用してしまった場合はどうなるのでしょうか?

著作者は以下のような措置を取る可能性があります。

①刑事上の対抗措置(刑事罰)

②差止請求(民事)

③損害賠償請求(民事)

④不当利得返還請求(民事)

⑤名誉回復等措置請求(民事)

以下で上記それぞれについて解説していきます。

 

①「刑事上の対抗措置」について

「刑事上の対抗措置」について、「著作権テキスト 文化庁著作権課」では以下のように記載されています。

【個人】
著作権、出版権、著作隣接権の侵害は「犯罪行為」であり、権利者が「告訴」を行うことを前提として、「10年以下の懲役」又は「1000万円以下の罰金」(懲役と罰金の併科も可)という罰則規定が設けられています(第119条第1項)。

【法人】
企業などの法人等による侵害(著作者人格権や実演家人格権の侵害を除く)の場合には、「3億円以下の罰金」とされています。

著作権侵害の刑罰規定は度々改正されており、罰則が強化され続けています。

なお、著作権侵害罪は、故意犯に限定されています。

「故意」とは構成要件該当事実の認識・予見とされています。

著作物を権利者に無許諾で利用している事実を認識していれば、それだけで著作権侵害罪の「故意」は認められます。

また、著作権侵害罪は、親告罪(著作権者等の告訴に基づき検察官が公訴提起できる罪)です。

 

ミッドジャーニー(Midjourney)と刑事罰

ということで、ミッドジャーニー(Midjourney)を使用して、プロンプトに著作物のタイトル等を入れて、類似物を生成・公表・販売等を故意に行なっていれば、刑事罰に問われる可能性があります。

 

 

②「差止請求」について

「差止請求」について、「なるほど図解著作権法のしくみ〈第3版〉 (CK BOOKS) 単行本 – 2017/9/2」では以下のように記載されています。

著作者、著作権者、出版権者、実演家、著作隣接権者は、著作者人格権、著作権等を侵害する者、侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができます(著112条1項)。すなわち差止請求権は、現在又は将来の侵害に対する救済措置です。
差止請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によって作成された物、専ら侵害の行為に供された機械、器具の廃棄、その他侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができます(同条2項)。
たとえば、ソフトウェアの違法コピーを作成したパソコンは侵害の行為に供された機械にあたります。

差止めの対象となる行為については、故意・過失を問いません。

客観的に著作権を侵害している行為があれば、善意・無過失であっても差止請求ができます。

 

ミッドジャーニー(Midjourney)と差止請求

現状、AIそのものは法的主体とならないため、AIの背後にいる法人や自然人に対する差止請求になるだろうと予想されます。「AIの法律 単行本 – 2020/11/20 福岡 真之介 (著)」参照。

よって、ミッドジャーニー(Midjourney)を使用して、プロンプトに著作物のタイトル等を入れて、類似物を生成して公表・販売等していれば、故意・過失を問わず差止請求をされる可能性があります。

 

 

③「損害賠償請求」について

「損害賠償請求」について、「なるほど図解著作権法のしくみ〈第3版〉 (CK BOOKS) 単行本 – 2017/9/2」では以下のように記載されています。

これは民法709条に定められており、不法行為に対して損害賠償が請求できるという原則により、著作権侵害でもこれができるというものです。損害賠償請求については、侵害した者の故意、または過失が要件となります。
損害額については算定が困難であるため、これは特許権の侵害でも同様ですが、侵害行為により相手方が利益をうけているときは、その利益額が損害額と推定されます。ただし相手が利益を受けていない場合もあり、このようなときでも損害賠償ができるように、「侵害行為によって作成された物の譲渡数量(又は公衆送信により受信されることにより作成された著作物等の数量)×侵害がなければ、著作権者等が販売できた物(受信複製物を含む)の単数量当たりの利益額=損害額」となります。ただし、著作権者等の能力に応じた額を超えない限度であり、譲渡数量の一部又は全部を販売できなかったという事情があるときは、それに相当する数量に応じた額が控除されます(著114条1項)。
このような損害額が立証できないときでも、最低限でも著作権を使用させたときの「使用料相当額」を損害額として請求できます(同条3項)。

上記のように、「損害賠償請求」については、侵害者の故意又は過失が問われます。

被告が利益を受けていた場合は、それが損害額となり、原告から請求される可能性があります。

また、損害額の立証が困難な場合でも、「使用料相当額」を損害額として請求することが原告は可能です。

 

ミッドジャーニー(Midjourney)と損害賠償請求

故意・過失は基本的に人間のみについて判断されるものであるため、AIの使用者には故意・過失はなく、損害賠償責任に問われる可能性は低いとされています。

しかし、AIが知的財産権を侵害することが具体的に予想できる場合に、それを回避するような仕組みを構築していなかったのであれば、結果、回避義務を果たしていないことが過失であるとして、AIの使用者が過失を問われることは考えられます。「AIの法律 単行本 – 2020/11/20 福岡 真之介 (著)」参照。

ということで、ミッドジャーニー(Midjourney)を使用して、プロンプトに著作物のタイトル等を入れて、類似物を生成・公表・販売等行い、故意・過失があれば損害賠償請求に問われる可能性があります。

 

 

④「不当利得返還請求」について

「不当利得返還請求」について、「著作権テキスト 文化庁著作権課」では以下のように記載されています。

不当利得返還請求侵害を被った者は、他人の権利を侵害することにより、利益を受けた者に対して、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には「その利益が残っている範囲での額」を、知っていた場合には「利益に利息を付した額」を、それぞれ請求することができます(民法第703条、第704条)。例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その行為者に故意又は過失がなくても、その出版物の売上分などの返還を請求できます。

「不当利得」とは、法的な根拠がなく、または不公正な方法で他人から利益を得て、これにより他人に損失を与えることを指します。

これは通常、誤って支払われたお金やサービスの提供、あるいは不正行為によって得られた利益などを含みます。

このような利得は、通常、返還義務があり、受益者はそれを正当な持ち主に返さなければなりません。

なお、侵害者の故意・過失を問いません。

ミッドジャーニー(Midjourney)と不当利得返還請求

ということで、ミッドジャーニー(Midjourney)を使用して、プロンプトに著作物のタイトル等を入れて、類似物を生成・公表・販売等していれば、故意・過失を問わず不当利得返還請求をされる可能性があります。

 

 

⑤「名誉回復等措置請求」について

「名誉回復等措置請求」について、「詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)」では以下のように記載されています。

著作権法115条の規定により、著作者は、故意又は過失により著作者人格権を侵害した者に対して、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、著作者の意に基づく氏名表示をした上での公衆への提供・提示、同一性保持の回復措置、新聞紙上における謝罪広告など、著作者の名誉・声望を回復するために必要な措置を請求することができる。

上記のことから、著作物を無断で改竄して出版したような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置が取られる可能性があります。

さらに、損害賠償も併せて請求されることもあります。

なお、侵害者の故意または過失が問われます。

ミッドジャーニー(Midjourney)と名誉回復等措置請求

ということで、ミッドジャーニー(Midjourney)を使用して、プロンプトに著作物のタイトル等を入れて、類似物を生成・公表・販売等行い、故意・過失があれば、名誉回復等措置請求をされる可能性があります。

 

 

Midjourney社の対応について

以下はミッドジャーニー(Midjourney)の「利用規約」の一部を引用・翻訳しています。

主に、ミッドジャーニー(Midjourney)を利用して生じる損害やトラブルへの対応について書かれている文を抜粋しています。

当社は、お客様の本サービスへの依存によって生じた損害について、お客様またはお客様の下流顧客に対して責任を負いません。

サービスと資産は両方とも、明示的か黙示的かを問わず、権原、非侵害、商品性、または権利に関する保証や条件を含むがこれらに限定されない、いかなる種類の保証や条件もなく、「現状のまま」で顧客に提供されます。特定の目的への適合性。 アセットの使用または再配布の適切性を判断することはお客様が単独で責任を負い、サービスの使用に関連するリスクを引き受けます。

We will not be liable to You or Your downstream customers for any harm caused by Your dependency on the Service.

Both the Services and the Assets are provided to Customer on an "AS IS" BASIS, WITHOUT WARRANTIES OR CONDITIONS OF ANY KIND, either express or implied, including, without limitation, any warranties or conditions of TITLE, NON-INFRINGEMENT, MERCHANTABILITY, or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. You are solely responsible for determining the appropriateness of using or redistributing the Assets and assume any risks associated with use of the Services.

Midjourney は、お客様に適用される可能性のある現行法に関していかなる表明も保証も行いません。あなたの管轄区域における現在の法律の状況についてさらに詳しい情報が必要な場合は、あなたの弁護士にご相談ください。

Midjourney makes no representations or warranties with respect to the current law that might apply to You. Please consult Your own lawyer if You want more information about the state of current law in Your jurisdiction.

当社はサービスを現状のまま提供し、それについていかなる約束も保証も行いません。

お客様は、利益、使用、営業権、またはデータの損失、または付随的、間接的、特別、結果的または懲罰的な損害については、発生の如何を問わず、当社がお客様または第三者に対して責任を負わないことを理解し、これに同意するものとします。

あなたはサービスの使用について責任を負います。あなたが他の人に危害を加えたり、他の人と紛争を起こした場合、私たちは関与しません。

あなたが故意に他人の知的財産を侵害し、それによって当社に費用がかかる場合、当社はあなたを探しに行き、あなたからそのお金を回収します。当社は、お客様に当社の弁護士費用を支払わせるよう裁判所に働きかけるなど、他のことも行う可能性があります。やめてください。

We provide the service as is, and we make no promises or guarantees about it.

You understand and agree that we will not be liable to You or any third party for any loss of profits, use, goodwill, or data, or for any incidental, indirect, special, consequential or exemplary damages, however they arise.

You are responsible for Your use of the service. If You harm someone else or get into a dispute with someone else, we will not be involved.

If You knowingly infringe someone else’s intellectual property, and that costs us money, we’re going to come find You and collect that money from You. We might also do other stuff, like try to get a court to make You pay our attorney’s fees. Don’t do it.

紛争解決と準拠法

本契約に起因または関連して生じるすべての法的請求(本契約の解釈または履行に関する紛争を含む)(以下「紛争」)は、カリフォルニア州の抵触法の規定を除き、米国カリフォルニア州法に準拠するものとします。大文字で申し訳ありませんが、注意深く読んでいただければ幸いです。私たちが話しているのは、経済的損害を引き起こさない個人的な紛争ではなく、深刻で合理的にメリットのある法的請求についてです。

 Dispute Resolution and Governing Law

ALL LEGAL CLAIMS ARISING OUT OF OR RELATING TO THIS AGREEMENT (INCLUDING ANY DISPUTE REGARDING THE INTERPRETATION OR PERFORMANCE OF THE AGREEMENT) ("Dispute") WILL BE GOVERNED BY THE LAWS OF THE STATE OF CALIFORNIA, USA, EXCLUDING CALIFORNIA'S CONFLICTS OF LAWS RULES. Sorry for putting that in caps, but hopefully You read it carefully. We're talking about serious and reasonably meritorious legal claims, not personal disputes that don't cause economic harm.

以上のことをまとめると以下のようになります。

・MJを使用することで生じた損害について、MJ側は責任を負わない。

・ユーザーが適用される法律については弁護士に相談してください。MJ側は答えられません。

・ユーザーが他人に危害を加えたり、紛争を起こした場合は、MJ側は関与しません。

・ユーザーが故意に他人の知的財産を侵害し、それによってMJ側に費用がかかる場合、ユーザーを見つけて支払いに応じさせます。MJ側の弁護士費用を支払わせるよう裁判所に働きかける可能性もあります。

・本契約に起因または関連して生じるすべての法的請求は、米国カリフォルニア州法に準拠するものとします。

 

ということで、ユーザーがミッドジャーニー(Midjourney)を使用してトラブルや損害が生じた場合には、運営側からの保証等はありません。

違法行為やトラブルを生じさせないように、規約に従い適切に利用しましょう。

 

 

Midjourney社の責任について

集団訴訟について

Midjourney社は集団訴訟を起こされていました。

Gigazine」によると以下のように記載されています。

大手集団訴訟事務所であるJoseph Saveri Law Firmのマシュー・バターリック氏が主導して提起された今回の訴訟では、画像生成AIが著作権で保護された数十億の画像で訓練され、アーティストからの補償や同意なしに画像がダウンロードされ使用されているとして、Stability AIおよびMidjourney、DeviantArtに損害賠償と今後の被害防止のための差し止めが求められています。

以上のように、Midjourney社は損害賠償請求と差止請求がされていました。

 

しかし、同じく「Gigazine」によるとこの裁判について以下のような続報を記載しています。

2023年1月には複数のアーティストが「Stable DiffusionやMidjourneyは著作権者の同意なく収集された画像を用いて開発されており、有料サービスも展開している」「画像投稿サービス『DeviantArt』はAI開発者による画像収集からアーティストを保護しなかっただけでなく、Stable Diffusionを用いた『DreamUp』という有料サービスを展開した。さらに、DeviantArtにはAI生成画像が大量に投稿され、人間のアーティストが締め出された」と主張し、それぞれの製品を提供する「Stability AI」「Midjourney」「DeviantArt」の3社を相手取った集団訴訟を起こしました。

しかし、集団訴訟は2023年10月30日に北カリフォルニア裁判所のウィリアム・オリック判事によって棄却されました。 オリック氏は判決文の中で「『Stable Diffusionの学習に使用されたすべての画像は著作権で保護されている』『従って、すべての生成画像は二次的な著作物とみなされる』とする原告の主張は単純に誤っている」と指摘。さらに、オリック氏は論点を「著作権で保護された画像を用いてトレーニングされたモデルデータを用いて生成された画像」に限定した場合でも「生成画像にまで著作権が及ぶとは確信できない」と述べています。

オリック氏は訴状を修正して問題を追及し続けることを認めています。

以上のように、2023年1月にミッドジャーニー(Midjourney)などを相手取った集団訴訟は、2023年10月に棄却された模様です。

ただし、原告の弁護士は30日の期限付きで訴状を修正・提出し、訴訟を継続するとしており、オリック判事はこれを認めています。

 

AIサービス企業が負うべき責任について

画像生成AIのサービス提供企業が負う責任について、「AIの法律 単行本 – 2020/11/20 福岡 真之介 (著)」によれば以下のように記載されています。

利用者に学習済みモデルを提供して利用させる行為については、利用者が私的使用の複製を超えて利用し著作権侵害をすることが想定される状況で、かかるAIソフトウェアを提供すると、共同不法行為責任を負う可能性がある。また、AIソフトウェアの提供者が、複製の対象、方法、複製への関与の内容、程度等の諸要素を勘案して複製における枢要な行為をしたと評価される場合には、侵害主体として侵害行為の責任を負う可能性がある。

以上のことから、ミッドジャーニー(Midjourney)のような画像生成AIサービス提供企業が、著作権侵害発生の危険性を有し、それを知りながら対処しなかった場合に、不法行為の責任を負う可能性があります。

また、画像生成AIサービスの提供者が、不正複製において重要な役割を果たしたと判断される場合、直接の侵害者として責任を負う可能性もあります。

 

 

画像生成AIに著作権は発生するのか?

今までは画像生成AIの著作物侵害性について述べてきましたが、画像生成AIで作成したものに著作権は発生するのかを解説します。

詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)」では以下のように記載されています。

【自律的AI生成物を巡る法的問題】
人間が創造的関与をすることなく自律的にAI技術が知的財産を生成する場合においては、現行の法制度をそのままの形で適用することには課題がある。とりわけ著作権制度の場合は、保護対象となる著作物は、人間の個性に基づく精神活動の成果が表現されたものであることから、財産権だけではなく著作者人格権が確立されており、自律的にAI技術により生成される表現物を著作権法上の著作物として評価することは、より困難といえる。

以上のように、著作物には人間の「思想又は感情」の表現(創作的表現)が必要であるため、AIが自動的に生成したものには著作権が認められないと考察されています。

逆に言えば、人間がAIを一部利用するにとどめ、かつ人間の創作性を加えて(創作的寄与)作品を作った場合は、著作物として認められる可能性があります。

「生成AI」は著作権を侵害するか?AI生成物に著作権は発生するか?コンピューターエンターテインメント領域における生成AIの利用と法律【CEDEC2023】によれば、「AIが自動生成した画像を人間が加工」した場合には、人間の創作的寄与があり、著作権が発生すると考えられています。

ただし、この場合も著作権が発生するのは加工を加えた部分に対してのみであるため、加工は全体的に行う必要があると述べられています。

また、「短いプロンプトで一発出力」したものには、人間の創作的寄与がなく、著作権が発生しないとされています。

 

ミッドジャーニー(Midjourney)の生成物は著作物となり得るのか?

前述したように、「短いプロンプトで一発出力」したものは著作物として認められないため、ミッドジャーニー(Midjourney)で簡単なプロンプトを入れて出力されただけのものには著作権が発生しないと思われます。

それでは、「長く複雑なプロンプト」等を使用した場合はどうなるのでしょうか?

図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本 田中秀弥 (著), 松村雄太 (著) 出版社 ‏ : ‎ 秀和システム  発売日 ‏ : ‎ 2023/5/19」では以下のように記されています。

画像生成AIに短いプロンプトを入力して画像を出力した場合は、プロンプトを入力した人間が創作に関与しているとはいえず、その画像がどれだけ創造的であったとしても、著作権が発生しない可能性が高いです。

しかし、より詳細で具体的な指示を含む長文のプロンプトを入力して画像を生成した場合には、そのプロンプトを作成した人間の創造的な関与が認められて、出力された画像に著作権が発生する可能性が高まります。

以上のように、長く複雑なプロンプトを入力した場合には、生成される画像に著作権が発生する可能性が示唆させています。

 

さらに「図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本 田中秀弥 (著), 松村雄太 (著) 出版社 ‏ : ‎ 秀和システム  発売日 ‏ : ‎ 2023/5/19」では以下のように記されています。

短いプロンプトであったとしても、プロンプトに含まれるキーワードやパラメーターの設定を変えるなど、試行錯誤しながら複数の画像を生成して、その中から画像を選択するといった場合もあると思います。そうした場合には、作成者が自らの感性をもとに画像を編集および選択しているため、創造的な関与があると認められる場合もあると考えられます。

上記の内容からすると、例えばミッドジャーニー(Midjourney)で「cat」と入力して、パラメーター(--sや--c)などを調整して、出力された複数の画像から良いと思うものを選択すると、創作的寄与が認められて著作権が発生する可能性があるようです。

ただし、これらプロンプトの著作物性に関しては、「令和5年度著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月 文化庁著作権課」では、創作的寄与に該当するかは検討項目としており、文化庁として考え方を今後整理していくとのことです。

プロンプトの著作物性について

ちなみに、プロンプト自体に著作物性はあるのでしょうか?

図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本 田中秀弥 (著), 松村雄太 (著) 出版社 ‏ : ‎ 秀和システム  発売日 ‏ : ‎ 2023/5/19」では以下のように記されています。

プロンプトに著作物性はあるか

「猫、昼寝、屋根」のような単語を羅列しただけのプロンプトの場合には、著作物性が認められる可能性はかなり低いです。これらの単語は誰でも思いつくようなものであり、創作的性質も表現性も乏しいためです。

その一方で、川端康成の長編小説「雪国」の冒頭の文章である「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。」のようなプロンプトであれば、著作物性が認められるかもしれません。これらの文章は作者の思想や感情が十分に表現されており、表現性も高いためです。

また、プロンプトに著作物性が認められた場合でも、著作権の及ぶ範囲が、デッドコピー(創作物をほぼそのまま模倣することを禁じる)だけにとどまる可能性もあります。つまり、自分のプロンプトを参考にして、誰かが類似したプロンプトを作成した場合には、自分のプロンプトの権利は及ばないことになります。

以上のように、思想や感情が十分に表現されていると分かるプロンプトであれば、そのプロンプトが著作物性が認められる可能性があります。しかし、その著作権の及ぶ範囲は限定的(デッドコピー)となる可能性も示されています。

 

 

アメリカでは

2022年9月米国にて、Kristina Kashtanova氏は「ZARYA OF THE DAWN」というマンガの著作権登録を取得しました。

しかし、この作品のイラスト部分の作成に、ミッドジャーニー(Midjourney)を使用していることを明らかにしていませんでした。

後に、米国著作権局はその事実を発見し、2023年2月に「ZARYA OF THE DAWN」の著作権保護を取り消しました。

著作権保護を取り消した理由は、プロンプトのみで生成したAI画像には、人間の創作的寄与が低いため、著作物として認められないという主旨でした。

ただし、マンガのセリフやストーリー、コマ割りなどには作者の創作的寄与が認められているため、著作権で保護されています。

あくまでミッドジャーニー(Midjourney)が生成したイラスト部分のみに、著作権を認めないという対応になりました。

 

 

 

 

まとめ

以上、画像生成AIであるミッドジャーニー(Midjourney)と著作権関連について解説してきました。

まとめると以下のようになります。

ミッドジャーニー(Midjourney)で画像を生成するだけで違法となる3要件(3つ全てが満たされた場合)。

  1. 「ステルスモード」以外で生成した場合。
  2. 生成した画像が著作物と類似性(似ている)がある場合。
  3. 類似性があった場合に、依拠性も認められる場合。

 

生成しただけで違法とならないようにする対策

基本的には「ステルスモード」で生成する限りは、私的使用の範囲内になるため、著作権侵害には該当しないと思います。

以下はステルスモード以外で生成した場合の対処方法です。

  1. 偶然に著作物と類似した画像が生成された場合は「❌」を押して削除する。
  2. 著作物のタイトルをプロンプトを入れない。

※「ステルスモード」で生成した画像であっても、販売したり、SNSにアップロード等行うと、著作権侵害の可能性が生じます。

 

著作権を侵害すると訴えられる可能性がある

  1. 刑事上の対抗措置(刑事罰)
  2. 差止請求(民事)
  3. 損害賠償請求(民事)
  4. 不当利得返還請求(民事)
  5. 名誉回復等措置請求(民事)

上記のように、著作権を侵害すると、著作者から様々な形で訴えられる可能性があります。

故意・過失がなくても訴えられる場合もありますので、注意しましょう。

 

ミッドジャーニー(Midjourney)で作成した画像には著作権はない

基本的にはミッドジャーニー(Midjourney)で生成した画像には著作権は発生しません。

出力された画像に対して、全体的に加工を行うと著作物と認められる可能性はあるようです。

パラメーターを調整したり、長く複雑なプロンプトで出力した画像には著作権が認められる可能性がありますが、まだそのような判例はありません。

 

 

 

参考・引用した文献及び資料

本章を執筆するにあたり、以下の文献及び資料を参考又は引用いたしました。

 

詳解 著作権法(第6版) 単行本 – 2022/12/21 作花 文雄 (著)

AIの法律 単行本 – 2020/11/20 福岡 真之介 (著)

令和5年度著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月 文化庁著作権課

著作権テキスト 文化庁著作権課

図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本 田中秀弥 (著), 松村雄太 (著) 出版社 ‏ : ‎ 秀和システム  発売日 ‏ : ‎ 2023/5/19

〈ケース研究〉著作物の類似性判断: ビジュアルアート編 単行本 – 2021/7/15 上野 達弘 (著), 前田 哲男 (著)

インターネットビジネスの著作権とルール(第2版) (エンタテインメントと著作権-初歩から実践まで-5) 単行本 – 2020/3/16 福井 健策 (著, 編集), 池村 聡 (著), 杉本 誠司 (著), 増田 雅史 (著), 赤松 健 (イラスト)

DX時代における デジタル・コンテンツ著作権 単行本(ソフトカバー) – 2021/11/26 金井 重彦 (著), 高橋 淳 (著), 宮川 利彰 (著)

なるほど図解著作権法のしくみ〈第3版〉 (CK BOOKS) 単行本 – 2017/9/2

「生成AI」は著作権を侵害するか?AI生成物に著作権は発生するか?コンピューターエンターテインメント領域における生成AIの利用と法律【CEDEC2023】

Gigazine 画像生成AI「Stable Diffusion」や「Midjourney」に自作品の著作権を侵害されたとするアーティストたちの集団訴訟が裁判所によって棄却される

著作権法 e-Gov法令検索

生成AIの著作権の4つの論点~著作権で把握しておくべきリスクと対応とは!? リモートワーク研究所【リモ研】

弁護士井上拓のフロンティアCH 【著作権】著作物って何?から丁寧に解説|著作権法の目的、著作者、著作物、データの保護【1-4

 

注意

※本章を執筆するにあたり、地元の弁護士に相談させてもらったり、上記資料を読むなどしてAIと著作権について調べました。しかし、あくまで私は法律の素人ですので、本章に書かれていることは不正確なものが散見されると思います。ご了承の上でお読みください。法律の詳細についての確認は、法律の専門家までお尋ねいいただくと共に、自己責任で生成AIのご利用をお願いいたします。

この記事で使われている挿絵に関してはAdobe Fireflyで作成しています。

Adobe Fireflyは著作権侵害のリスクが無く、商用利用も可能な生成AIです。

Adobe Fireflyの始め方やTipsについては拙著「Adobe Firefly(アドビ ファイアフライ)パーフェクトガイドブック 未経験者から上級者まで完全対応の決定版!」をご覧ください。